《MUMEI》 放課後とモデル王子鞄を家に置いてくる事も、制服を着替えてくる事もせずに学校から徒歩15分のところに位置する大きなショッピングモールにいる瑞希はふと一ヶ所に目を向けて一瞬固まってからすぐに目を背けた。 明らかに不自然だったその場所は何故か女性がそれはもう角砂糖に群がるアリの如くキャーキャーと騒ぎながら集まっていた。 瑞希が一瞬固まったのはその間から見えた元凶の人物を認識したからだった。 黒から茶色へと変わっていくなんとも印象的な髪色をしたその人物はどこか困っているようだった。 「あぁ!!やっぱり優斗君カッコいい!!」 「あ、……はは。どうも…」 「今からお茶しない〜?」 「いいね、行きた〜い!」 「…え、あの……ちょっと困ります…」 困りながら微笑をたたえる彼、新堂 優斗はその困った顔さえも様になっているためまったくの逆効果である。 流石はモデルだ、と瑞希は心の中で嫌味にも似た、というか100%嫌味で優斗を毒づいた。 優斗の家は有名な芸能人一家で優斗は主にモデルの仕事をしている。 夏休みなどに入るとまた俳優などの仕事が入る事もあるらしいが。 呆れた様に目を細めた瑞希は女性の多さに少し怯みながらも優斗のいるところまでしか聞こえないように気をつけながら声を上げた。 「…新堂先輩〜!すみません、遅れてしまいました!」 完璧に『後輩』を装い尚かつ、少し強引に優斗に近付く瑞希に周りの女性はそこで初めて優斗から目線を外し、優斗は声の主を確認すると困っていた顔が一変して驚きで目を見開く状態になっていた。 そんな優斗に今は話しを合わせておいた方が身のためですよ?と笑顔を向けた瑞希に優斗は少しぎこちないながらも周囲を魅了する笑みを浮かべた。 さて、ここからどう料理していこうか、と瑞希の口の端が僅かに吊り上がった事を知る者……否、気付く者は何処にもいなかった。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |