《MUMEI》

メリーはやれやれと肩を落とすと、探してやる為夢を彷徨う事を始める
誰の夢かも解らない様々な夢の中
渡っては見るがその姿を見つける事は出来なかった
何処へ行ったのだろうか
探せど探せどその姿は見つからない
暫く探す事を続けていたメリーだったが、等々飽き
取り敢えずは少年の夢の中へと戻ってみる事に
「……夢喰い」
戻ってみればソコに少年の姿
だがどうしたことか、周りに見えていたはずの景色は何故か無く
何もないその場所ばかりが広がっていた
「何か、あった?」
尋ねてみるが少年は首を横へ
振っては見せながら、前方一点を指差して見る
その指す先を見てみればソコに妹の姿
だがその存在は(居る)というよりも(ある)と表現した方が正しい
「また、会ったね。夢喰いさん」
メリーに気付いた妹は可愛らしい笑みを浮かべながら手を振ってくる
この有様はこの少女の仕業なのだろうか
メリーが僅かに睨む様な視線を少女へと向けてやれば
「……全部、壊しちゃった」
ペロリと舌をだし、まるで悪戯をしてしまった子供のような顔
その顔は、だが今までのそれとは明らかに違う様にメリーには見えた
「……なんで、壊したの?」
睨む様に妹を見やるメリー
だが少女は答える様子は無く、更に笑みを浮かべて見せる
小馬鹿にされているのかと僅かいメリーは顔を顰め
だがすぐに、少女の背後に馬のような影を見つけた
心底目障りだとメリーは派手に舌を打ち、銃を構える
だがその存在はあまりに朧げで、メリーは構えた銃をまた降ろした
その途端に消える影
完全にその姿が消えたのを確認すると、妹はその場に倒れ伏す
抱きとめてやれば、だが妹の姿はそのまま消えていった
「あいつ、何処に――!?」
突然のソレに慌てる少年
メリーも辺りを見回し、その気配を探しては見るが見つからない
「……ねぇ。あの子、一体何者?」
慌てるばかりの少年へ、メリーの冷静過ぎる声が問う
何の事かと聞き返されれば
「……なんでも、無いよ」
所詮、問うてみた処で無駄だろうと
メリーは問うたそれを曖昧にし、身を翻した
取り敢えずは、探さなければ
どうしてか嫌な予感が胸の内を過り、メリーは足元を蹴り付け飛んで上がる
眼下に見下ろす、夢の景色
だがソコに彩りは無く、唯々灰色の世界ばかりが広がっている
以前のメリーならこの色のない世界を心地よく思えたのかもしれない
しかし今は
「……見たくはないね。こんな世界」
つい愚痴る様に呟いてしまえば
自分も随分と変わったものだと、自身に対して嘲笑を浮かべる
「……何、あれ」
暫く当てもなく飛んでいると
直ぐ真下に、黒く巨大な何かが緩々と蠢くのが見えた
一体何なのだろうと近くまで降りてみれば
「……コレ、獏?」
ソコに居たのは巨大な獏
今まで見た事のないその巨大な様に、流石のメリーも表情を強張らせる
「その様だな。私もこれ程の獏を見たのは初めてだが」
驚きに暫く動けずにいると、横から徐な声
弾かれるように向き直ってみればソコにロンの姿
常日頃あまり表情で感情を表さないロンだが
今、この時ばかりは見て分かりやすいほどに強張っていた
「アレ、どうすればいいと思う?」
つい問う事をしてしまえば、だがロンからの返答はない
何かいい打開策でも提示してくれるのではと期待していたメリーだったが
それも、今のロンの様子では期待は出来ない
「……使えない」
「お前にだけは言われたくはないが」
互いが互いに嫌味を言い合えばメリーは身を翻す
これ以上の問答は全くの無駄だと獏の方へと向き直った
獏と目が合った、その直後
その獏から、か細い声の様な音が聞こえ始めていた
一体、何の音か
メリーとロン、ほぼ同時にそちらへと向き直ればソコに
瞬間、目の前の景色にはっきりとした音を立て、罅の様なものが見える
「……次から次へと、何?」
ほとほと面倒だとそちらを見やるメリー
溜息をついた途端に、その罅が一気に砕け散り
現実とも夢とも取れない歪な世界がソコに現れた
その世界が現れた事に気付くと
獏は身を翻し、その世界へとのそのそと進んで行く
「この中に、何かあるの?」
問うてみるが、当然返答は無い

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