《MUMEI》

「ち、ちょっと!…この人誰!」


と、女性方は優斗に目を向けて聞いた。
勿論、女性陣は瑞希に聞いた気などさらさらないのだろうがその問いに答えたのは瑞希だった。


「新堂先輩の後輩で、生徒会見習いです。今日は色々と教えて貰えるということで待ち合わせをしていたんです。…すみませんが、お引き取り願えませんか?」

「貴女は学校でいつでも会えるじゃない」


予想ずみの返答に内心呆れながら女性陣に爽やかな笑顔を向けた。


「学校でも先輩は囲まれていますよ、女の子達に。それに先輩はプライベート中ですし、先輩は困っているのですから素直に引くべきです」

「…っ」

「と、学校の女の子達には言うのですが皆さん聞いてくれなくて……」


反論しようとした女性達にその隙を与えず瑞希はいかにも困っている、というような表情を“作って”続けて話した。


「今ここにいるのが『大人』の方でよかったです。…大人は聞き分けもいいですし、常識をわきまえていらっしゃいますから」


大人、という部分を強調させて話す瑞希に女性達は何も言えない様子だった。
最後の後押しは瑞希の優斗にだけ聞こえないように言った一言だった。


「それに………先輩は案外押しに弱いようですよ」


ニッコリとして言い放ったその言葉に女性陣は次々とばらけていき、最後に残ったのは優斗と瑞希だけになった。


瑞希は何も言わずその姿を見ていたがその表情が「すっきりした〜!」と語っているようだった。


「…赤城さん…だよね。ありがとう、助かったよ」

「私、逆ナンに遇っている人って見たの初めてです」


瑞希の言葉に苦笑を漏らした優斗だったが、何か思い付いたようでバッと顔をあげた。


「…へ?」

「あの、さ…」


やたらといい渋っていた優斗だったがやがて実に言いにくげに口を開いた。




「…ちょっと……付き合ってくれないかな…?」


その声は小さく「…ちょっと」のところは聞きにくかった為か通行人達は勢いよく瑞希達を振り向く事となった。

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