《MUMEI》

少しの沈黙の後に瑞希が言った「何に付き合うんですか」という発言は決して天然発言などではない。
なぜなら優斗に告白された訳ではないからだ。


もちろん顔を赤くしないのも天然だからではない。
なぜなら優斗に告白された訳ではないからだ。


大事な事なので二回言いました、という言葉らしく瑞希は心の中で同じ言葉をリピートしていた。


「……何かおごって下さいね」

「…ありがとう、助かるよ」


それだけ言うと優斗は瑞希を促して歩き出した。

周りからの意識していなくても感じれるほどの視線はやはり瑞希の勘違いではないのだろう。


「何を買うんですか?」

「モデル用のデート服だよ。好きなものを選んで来てって言われてね。…でもあいにく俺は服の流行とかに疎いから、困ってたとこだったんだよ」


へぇ〜、と気の抜けたような相槌をうちながら瑞希は『この人なら何着ても似合うだろうな』と色々な服を着た優斗を想像して思っていた。


「…デート服、ですか。………あぁ、でもモデルなら服のコーディネートや流行くらいはプロ並に出来ておかないと困りますよ」

「だよね……。うん、善処します……」


優斗は少し項垂れていった後、顔を瑞希の方に向けた。


「赤城さんはいつもどんな服着てるの?」

「…機能性重視ですからねぇ。パーカーとシャツとズボンですかね」


瑞希の言葉に優斗は驚いた、というよりギョッとした。


「もっとオシャレするべきだよ」

「生憎オシャレをしても見せる相手も見る相手もいませんから。…それに動きにくそうですし」

「でもバリエーションが少なすぎるよ。買っていこう、ね?」


妙に乗り気な優斗に呆れた表情を見せながら瑞希は口を開いた。


「要りませんし、使いません。……というか主旨を忘れていませんか?今私達が探しているのはあくまで先輩の服であり、私の普段着を見に来た訳ではありませんよ」

「…うん、そうだね」


後輩に諭されてしまった優斗は今度こそちゃんと自分の服を見始めた。



やがて優斗はいい服を見つけたのか、向こうの方へいってしまった。

優斗の影響のせいか、瑞希は女性ものの服をジッと見つめていたが目を逸らすと優斗の歩いていった方向を進んだ。

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