《MUMEI》
神名晴の話。その6
「やあ、待たせたかい?薫くん」
浜松天馬さんが現れた。

あの後電話に出た。
天馬さんはすごく驚いていた。
電話で長話はできない。
だから、直接会って話をすることにした。

「……よく僕のことを晴姉さんの弟ってわかりましたね」
最寄り駅の近くの喫茶店の中に入る。
「晴から君の事を聞いていたし、写真も見たことあるから一目でわかったよ」
……なんだろう。ムッとなった。
「あなたは……晴姉さんのことをどう思っているんですか?」
「はは、いきなりだね」
笑顔を浮かべていた表情は、スッとスイッチが入ったように真剣な表情に切り替わる。
「ぼくは君のお姉さん、晴のことを愛しているよ」
嘘偽りは、感じられなかった。
この人は、本気なんだ。
本気で、晴姉さんをお嫁さんにしたいんだ。
……また、モヤモヤとした。
何も返事を答えずにいると、天馬さんから話しかけてきた。
「お姉さんを取られるのは、嫌かい?」
そのシンプルの問にも、うまく答えられない。
「……そうか」
何か納得したように頷く天馬さん。
そして、信じられないことを言い出す。
「薫くんはお姉さん想いなんだね」
「ええ!?」
そんなことあるはずがない。
あんなガサツで大雑把でぶっきら棒の晴姉さんを相手に想うわけがない!
「君となら、ぼくはうまくやっていけると思うな。勿論、君が良かったらの話だけどね」
「…………」

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