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《MUMEI》 「あらあら、久しぶりねぇ。…雅君も大きくなって……ここじゃなんだし中に入りましょうか」 にこにこと笑う、一時期とは言え仮の親だった美穂さんに二人共に頷いて懐かしい施設の中へと足を踏み入れた。 三人が入ったのは恐らく美穂さん専用であろう部屋だった。 ソファーとテーブルが置いてあるだけの素朴な部屋だったが瑞希も雅もこの人らしい部屋だ、と感じていた。 座るように促されて座った二人に満足そうに微笑むとどこか懐かしそうに目を細めながら話を切り出した。 「…本当に久しぶりね。…雅君と瑞希ちゃんは一緒にいた時間は大分短かったと思うけど……付き合ってるの？」 「…だったらいいんですけどね」 否定しようとした瑞希より先に言った雅の答えを聞いた美穂さんは「あらあら」と目を丸くした後、ニッコリと笑って、 「雅君、頑張ってね」 と言った。 妙に恥ずかしくなった瑞希がコホンッと咳をすると悪びれた様子もなく美穂さんはただ笑うだけだった。 「…今日は水遊び用の玩具を持ってきたんです」 「俺はお菓子を持ってきました。……新作が出来たのでそれの感想も兼ねてなんですけど」 瑞希が金曜日にショッピングモールにいたのはこれを買うためだったのだ。 一方雅は、幼少期の雅を引き取った人が今となれば有名なお菓子メーカーの社長さんだったためにお菓子を大量に持って来ていたのだった。 「まぁ、ありがとう。……そう言えば人手が足りなくてね…。手伝ってくれるかしら？」 「良いですよ」と瑞希は答えながら美穂さんと同じように目を細めた。 彼女の一つ一つの行動が無垢で純真な少女に見えて仕方がなかったのだ。 雅も快く承諾し、今日１日ここの子供達の親がわりをすることとなった。 前へ |次へ |
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