《MUMEI》 真っ白ビルの倒壊する音と埃、そして地震のような振動が辺りを襲う。 どのくらい経っただろうか。 やがて振動と音が治まり、ユウゴはそっと目を開けた。 そして自分の無事を確認する。 ガラガラと背中に乗った破片を振り落としながら、ユウゴは半身を起こし、座ったまま自分の体を眺める。 真っ白に染まった全身に、所々赤い染みが広がっていた。 どこかに怪我をしたのだろうが、すでに体は怪我だらけ。 どの部分が今、怪我した所なのかわからない。 それほどの激痛もないので、たいしたことはないのだろう。 ユウゴはゆっくり立ち上がりながら、後ろを見た。 崩壊したビルはユウゴが倒れていた場所の僅か数十センチ後ろまで迫っていた。 あそこで跳ばなければ、今頃はこのビルの下敷きになっていただろう。 「………あ!そうだ、ユキナは?」 思い出したようにユウゴは、周辺に視線を走らせてユキナの姿を探す。 すぐ隣を走っていたのだから、ユウゴの近くにいるはずである。 しかし見当たらない。 「……まさか、下敷きに?」 思わず頭をよぎった不吉な考えを口に出しながら、ユウゴはビルの残骸を眺めた。 その時、すぐ近くで呻き声が聞こえてきた。 その声はユウゴの足元から聞こえるようだ。 足元には埃や細かい破片が分厚く降り積もっている。 よくよく見てみると、その下に、モゾモゾと動くものがある。 「……んー?」 ユウゴはしゃがみ込んで、その動く場所をバンっと叩いてみた。 「いたっ!」 「おわ!!びっくりした〜」 ユウゴは思わずのけ反った。 跳び起き、現れたのはユウゴと同じく、全身を真っ白に染めたユキナ。 その顔までも白く染まっており、まるで誰だかわからない。 「痛いでしょ!なんでいきなり叩くわけ?」 憤った様子でユキナはユウゴの顔を見た。 そして、一瞬の静止の後、思いきり吹き出した。 「つーか、誰よ?」 指を指して笑いながら、ユキナは言う。 ユウゴはため息をついて「言っとくけど、おまえも同じだから」とユキナを睨んだ。 そして、警戒するような周りを見渡した。 警備隊の気配はない。 「おい、いつまでも笑ってんなよ。今がチャンスだ。隠れるぞ」 ユウゴの声に、ユキナはハッとしたように笑うのを止め、大きく頷いた。 前へ |次へ |
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