《MUMEI》

10月4日、午前2時34分_____


病院内は元気(?)な赤ちゃんの泣き声が響いた。

その声の根元である部屋の前に一歳ほどの赤ちゃんを抱えて祈るように座っていた男性は顔を輝かせた。








その男性が赤ちゃんとその母親、つまり自分の妻に会えたのはその一日後の事だった。










「…名前は何が良いかしら」


そういって微笑む女性は美しく、容姿こそまだ高校生では無いのかというほど若く見えるものだったが、彼女の瞳が優しい光を帯びている事から母親だと感じさせられる。


「……日菜…いや……陽向、なんてどうだろう?ちょうど陽壱や陽兎ともかかるし」

「陽向………今日から貴女は、姫川 陽向よ」


男性の言葉に女性は嬉しそうにしながら赤ちゃんに話しかけていた。


「(陽向……ね)」


勿論、その赤ちゃんの精神年齢は17歳くらいなのだが。




そんな二人の愛娘である陽向に異変が起きたのは、陽向がちょうど3歳の誕生日を迎える頃の事だった。


陽向はその幼い体に病気を宿し、体の自由を奪われる事となった。

両親は嘆き、陽向より一歳年上の二人の兄は涙を流した。


どうにか一命をとりとめていた陽向は病気こそなおったが、後遺症として体が弱くなり、激しい運動が出来なくなっていた。


そんな状況ながら本人が一番冷静に状況分析していたとは露知らず、家族は陽向の生存を大いに喜んでくれていた。



そうして、神の思い描いた姫川 陽向の人生が始まったのである。

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