《MUMEI》

少しあどけなさの残るものの棘がついているような声音でそう言ったのは、私の兄の陽壱さんだった。


陽兎さんは?と思った時にはもう、私の体は後ろに引っ張られ誰かの背中に隠されていた。


「俺達の妹に手を出すようなら……手加減はしないケド?」


そういった陽兎さん(ここからじゃ表情は見えない)の背中は少し大きく見えた。

まぁ、表情は見えなくともその声は限りないほどの怒気が含まれていることが丸わかりだったのだが。


「あ……あ?ハハハ!聞いたか、コイツ……手加減しないって?こっちのセリフだよ」


少し怯んだお兄さん達だったがすぐに馬鹿にしたように仲間のお兄さん達と笑いあった。


正直私は、さほど心配はしていない。





「……な…」


__一瞬だった。


気付いた時には陽向の腕をさっきまでつかんでいたお兄さんが地面に叩き付けられていた。


「ば……化け物ッ!」

「…何?もう一回見たいの?……今度は、腕を折ってあげようか」

「ひ、ヒィ!!」


未知の力を目の当たりにしたお兄さん達の言葉に陽壱さんと陽兎さんは瞳に妖しい光をたたえてふっ、と微笑んだ。


その笑みにお兄さん達が怯えて走って逃げていくと二人は陽向の方を振り向いてさっきとは全く違う優しい笑顔を見せた。


「…大丈夫?」

「はい、ありがとうございました」


陽兎さんはペコリと頭を下げた私の頭を優しく撫でた。


…陽壱さんと陽兎さんじゃ、少し他人行儀すぎたかもしれないな。


「戻ろうか」

「はい。_____ヨウ兄さん、ハル兄さん」


そう私が名前を呼んだだけなのに二人ともキラキラと顔を輝かせた。


「じゃ、行こうか。……ヒナ」


そういうとヨウ兄さんは私の手を握り、ゆっくりと歩き出した。

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