《MUMEI》
第十章
ランはぽろぽろと涙が流れた。「そんな…。じゃあ、私とタクヤ君は兄弟ってこと…?」こんな状態のまま母が死んだなんて…。「お母さん…」ランは生まれて初めて、母親のことをお母さんと呼んだーーー。
『ピロピロピロ、ピロピロピロ』ランの携帯の着信音が響く。「はい、ミョウカワです。」「ランちゃん?大変なの!あのねあのね…」ハルカの声だった。「ハルカさん、どうしたんですか?」「アキラが病室から脱走したの!今タクヤを呼んで駆け付けてくれて、探しに行ったの…」ランは、アキラの中の悪魔が動き出した、と確信した。「分かった。今からすぐ行くね。それまで病室から動かないでね?」「うん、うん……」ハルカは泣きそうな声でか細い返事をした。ランは母の家を飛び出して、病院へと向かったーーー。

「ハルカさん!」「ランちゃんっ!」「とりあえず落ち着いて。ハルカさんは街でアキラ君を探してください。私は病院のすぐ近くの森の中を探します。」「え、でも、森は危ないよ…?」するとランは、ハルカの両手を握って力強く言った。「何言ってるんですか。アキラ君が大好きなハルカさんになにか起こったらアキラ君が悲しみますよ?」ランはニコッと笑うと、病院を飛び出して行った。

(何処?何処なの?)ランは深い森の中で一生懸命アキラを探していた。すると。 『ウォォォォォォォ…』(!?)『ウガァァァァァァァッッ!!!』ランは叫び声のする方を振り向いた。そこにはーーーアキラが苦しそうにもがきながら立っていた。「アキラ君っ!」ランは慌ててアキラのもとに駆け寄った。『バキバキ、バキバキバキ…』「!!!」すると、アキラの背中から黒い物が沢山出てきた。まるで黒い薔薇の茎ーーー。「アキラ君っっ!!!」その時。「うぐぅ、ぐ…」ランを激しい痛みが襲った。(!!!)自分の腹を見ると、そこから一筋の光が漏れだしていた。『バキュンッ!』ランの腹から青い光の塊が飛び出すと、ランはぐったりとして倒れた。「ラン!アキラ!」タクヤが走って駆け寄った。だがもう遅かった。…と思ったその時。「痛たたたたぁ〜っ…。ん?タクヤ、何でこんなところに居るんだ?あれ?病院は?」「アキラっ!」タクヤは思わずアキラを抱き締めた。「おわっ、ちょ、ホモかよお前は!」「いいからお前は病院に戻ってハルカに連絡しろ。お前、ハルカがどんだけ心配してたか分かるか?!」「分かった。ランを頼む。」そう言ってアキラは街の方に走っていった。

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