《MUMEI》

「ピッ!」と笛がなり一斉に泳ぎ出す生徒達の中で異彩を放つ王子と姫を女の子達はうっとりとした目で、瑞希はうんざりとした目で見ていた。


まるで魚の如く、君達は足が尾ひれなの?人魚なの?と言いたくなる様な自在な泳ぎを見せている。


「あ、次か」


自分の番というのに気が付き、瑞希は「面倒だしゆっくり泳ごう」と立ち上がった。

そこに声がかかった。


「おい」

「はい?」


瑞希に声をかけたのは翔だった。


「結菜の泳ぎ見たか!」

「え?……はぁ、まぁ」

「反応が薄い。……あぁ、そうかお前泳げねぇから結菜がどんだけすげぇのかわかんねぇのか。……わりぃな」


プププ、と嫌味ったらしく笑う翔に必要以上にイラッときた瑞希は翔をにらむ事すらせずさっさとプールに入る準備を始めた。

「本気で泳いであげますよ」と笑みを浮かべながら。


ピッ、と笛がなり瑞希を含む生徒達が泳ぎ始めた。
この時点でもう勝負といってはおかしい気がするが一番速い人は一目瞭然となる。

瑞希はあろうことかけのびで向こう側までいってしまい、そのまま水中で一回転してクロールで速く、それでいて優雅に泳いでから見事な平泳ぎでゴールした。

もちろん結果は一位で瑞希がゴールしたのに他の人達は平泳ぎに入ろうとしているところだった。


瑞希の泳ぎは王子達にも勝る速さだったらしい。


瑞希は翔に目をくれることなく自分の場所に行った。







「自由時間は15分だ!入っていいぞ」


瑞希はプールに入り、結菜達から距離をとった。


「ねぇ」

「え?…あ」


そこにいたのは蒼だった。


「あっちに居ないの?」

「…うん、こっちがいい」


「ん?あれ、結菜じゃない?」

「…あぁ、うん」

「瑞希ー!!」

「ぐはっ」


今度は猛スピードのクロールで突進された。
その姿を見ていた諒たちは笑い出した。(正確には諒と翔)


「…コイツら………よし、逃げよう」


そうして結菜の気が向こうに向いている内に瑞希は泳ぎ出した。


「あ!瑞希!!」


見つかれば勿論結菜はおいかけてくるわけで…

「…なんで諒達も参戦してるの!?」


王子達にも追いかけられた瑞希は必死に逃げ回り、中にいた生徒達は外に弾き出されることとなった。


結果は勿論捕まった。
1対6の鬼ごっこで5分も逃げ回れた瑞希がむしろ凄いことだろう。
できることなら異議を唱えたいところだった。




有り得ないほどの疲労と共に瑞希は着替えて教室に戻った。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫