《MUMEI》
神名晴の話。その９
「薫！？なんで叔母さん家に電話してるの？」
「は、はは晴姉さんこそ何で！？」
晴姉さんが叔母さん家に行く理由なんて……！
「何でって……結婚の報告をしに来てて」
あ……、そりゃ、しなきゃダメだよね……。
「……で、次はあんたが言う番よ」
「え」
結婚宣言より以前の晴姉さんの声のトーンで、言う。
「言わなきゃ……帰った後、わかってるよな？」
ダメだ。
正直に言わんと、明日があるかわからん。



「馬鹿かお前は！！」
「うっ」
受話器から高音量の晴姉さんの声が飛び出す。
前もって耳から受話器を離してたのに……キクなー。
「そんなことで……本当に私が喜ぶと思ってるの！？」
「いや、喜ぶっていうか……幸せになれるんじゃないか、て」
「同じだろ！馬鹿！！」
「うお」
予想通りの反応。何故受話器から離してるのにキクんだろう……。
「なんで……そんなこと考えるの……なんで」
「……ごめん」
「あんたを邪魔って一言でも言った！？私は……あんたがいないと……たった一人の大切な家族がいないと……」
声が段々と……詰まったような声に変わる。
泣い……てる……？
「ね、姉さん……？」
「……電話じゃダメ。今から帰る。一歩もそこから動くなよ！動いたら……ぶっ飛ばす」
なん……だと……。
「……はい」
恐らく一歩も動かなくても……僕の命運は変わらないだろう。
さっきとは別の意味で、覚悟を……決めた。

前へ |次へ
作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する
携帯小説の
無銘文庫