《MUMEI》

その日の練習中、ずっとうわの空で、挙げ句の果てには顔面にボールを受ける始末だった。

そんな状態の花宮を放っておいたら危険だと判断したメンバーたちは花宮を強制的に帰宅させた。






帰宅途中、さらに花宮を困惑させる出来事が起こる。

家までもう少しという所で向こうから一人の高校生が歩いてきた…までは良かったのだがそれは例の蜂蜜頭の男子生徒で……

「……っ!」

花宮は慌てて顔を背けた。
何故なら自分はバスケで人を傷つけた悪童でその顔はバスケをやっていれば誰もが知っていることだ。

高校生との距離がどんどん縮まっていく…
そしてすれ違う寸前でその高校生が声をかけてきた。

「霧崎の……花宮?」

反射的に顔を上げると童顔の…大きな瞳と目が合う。

バッと顔が熱くなる。火でも吹き出しそうだ。そしてとっさに思いついたのは必殺の猫かぶり。

「ええと……、あなたは?」

上手く取り繕えただろうか……
まだ顔は熱いままだ。

「秀徳の3年で宮地 清志。」

「えと、霧崎第一の2年で……」

「知ってるよ、花宮……真。」

知ってるよ、その一言で胸がギュッとなった。他愛もない世間話を5分ほどした後、宮地…先輩はCDショップへ行くからと言って別れた。

別れ際にメアドを交換したいと言うと快諾してくれた。




家に帰ると鞄を自室に投げ捨てベットにダイブした。

「もぅ……無理…。」

枕をギュウギュウ抱きしめながら携帯の液晶を見る。


“宮地さん”

登録されたたった4文字を見てまた身悶えるのだった。







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