《MUMEI》

_____時は放課後……



現在瑞希の目の前にいる諒は何時もは脱ぐ事のない夏用セーターを脱いでいる。



諒は「…よし、全員揃ったね」と一人一人確かめる様に瑞希達を見ていった。
結菜はちゃんと諒に言われた事を守りどこかで自習でもしているのだろう、ここには居なかった。


「じゃあ、今日は少し遅いし一教科20分でね。…まずは蒼、宜しく」


蒼はただ「…ん」と言うと翔を引き連れてテーブルの端の方に移動し、すぐに勉強を始めた。


だがどうしても近くなので会話は聞こえてくるわけで……



「…だから、ここは……xを代入して…」

「代入って何だ?」


「…中1の範囲……なんだけど……」

「…う……で、代入って何?」


「……辞書…を引け」







「…うん、辞書って万能だよねー」


蒼達の会話を聞きながらすでに瑞希達は軽い現実逃避にひた走っていた。


「…ねぇ、本当に無理なんだけど」

「諦めて」


げっそりとした顔で瑞希が言うも、諒はそれを一刀両断した。


「酷いよ、鬼畜だよぉ……」

「無理なものは無理」

「こっちの台詞だ!」


しばらく瑞希と諒の攻防戦が続いたが諒は見逃す気などさらさらないらしく「駄目」「無理」の一点張りだった。


「…次、誰」


いつの間にか10分が経っていたみたいで蒼が諒に聞いた。



たかが10分、されど10分。


蒼はこの時間内で生きる気力を失っていた。
ぐったりと椅子に持たれかかっている。


「…次は……優斗ね」


指名された本人はサァ、と顔を青ざめさせた。


どんどん時間が経っていき、残り諒と瑞希の二人となった。


あの雅でさえ今は放心状態である。



「…じゃ、瑞希。頑張って」

「…うぅ…はい」



「大丈夫、大丈夫…」と心の中で何度も繰り返し、勇気を出して翔の方へ向かった。

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