《MUMEI》

あのあとヨウ兄さん達と最初のクラスレクが終わったら生徒会室前に集合と言われて今は入学式の最中だ。


生徒会室は役員だけでなく風紀委員幹部、そして委員会長、クラブ会長も兼用で使っている。…らしい。


なので大きな会議などは会議室を設けられている。
…無駄にでかい訳だ。


周りの新入生達は誰も全員が真新しい制服に身を包んでおり、少し大きめなその制服姿はずいぶんと微笑ましいものだった。


勿論、お前もその内の一人だろう。と突っ込まれれば反論はできないのだが。

ただでさえ身長が150cm前半というチビなのだ。
制服が大きく見えるのも無理は無い。
逆に微笑ましいと思われるのは私の方だろう。


一時間ほどで入学式が終わり、各々自分のクラスへ向かった。

私は1年5組らしい。


中に入ると半分位の新入生達が席についていた。


自由に座れという事なのだろう。
女子は女子で、男子は男子で固まって座っていた。

…君達はオオカミですかー?



私は一番座りたかった一番後ろの窓際の席についてクラスの様子を眺めていた。


「…隣、いいかな?」


いきなり声がかかってきたので少し肩を震わせてから声がした方を向いた。


少し低めのハスキーな声だったので男の子かと思ったが、私に声をかけてきたその人はどうやら女の子のようだ。


普通に見てみれば、男子用の制服も着ていて特徴的な声に加え、顔が整っている。
短い綺麗な黒髪に少し細めの瞳は男と勘違いさせるには充分なものだった。


「…どうぞ」

「あぁ、自己紹介がまだだったね。…僕は間宮 千尋。よろしくね」


一人称まで『僕』か。

先程から一部の女子達がチラチラと“間宮さん”を見ているのは決して気のせいでは無いのだろう。


「姫川 陽向です。…よろしくお願いします、“間宮さん”」


にこりともせずに自己紹介をしたのだから無愛想とか失礼だとか言われるかも知れないが、今のところ間宮 千尋にそんな事が指摘できない(元々する気ない)ほど驚いていた。


「…なんで分かったの?」

「…なんでって……うーん、女の子の体つきだなと思って…」


首を捻って唸る陽向の姿に千尋は「…なにこれ可愛い」と陽向に聞こえない位の声で呟いた。

どうやら陽向は間宮 千尋のお気に召したようだ。


その時、いきなり女の子達が色めきだった。

一体何だろうか、と陽向達も前に目を向けるが少しの間私は固まっていた。




目の前の、現実味を帯びない光景に___










___ただ、目を奪われていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫