《MUMEI》

瑞希は諒達から離れて翔の前まで行って椅子に座った。



「…じゃあ、私は英語でしたよね。始めましょうか」


とりあえずは彼が何処までできるのかを測ることからしようと瑞希は考え、いい聞き方を思いつかなかった為、直球で「何処まで分かるんですか?」と聞いた。


「…とりあえず、アルファベットは書ける。問題なんか無いだろ?」

「おおありです。ありすぎて困りますよ」


瑞希が凄い勢いで言ったからか翔は少し怯んだ。


瑞希が内心「ザマァみろ」とせせら笑っていたのは秘密である。



「…じゃあ、ハローって英語で書けますか?」


「h.a.r.o.u」


「それじゃあ、ハロウになるじゃないですか。いや、根本的に間違ってるんですけど……」


「は?ハローだろ?」


翔は至って真面目な顔で瑞希に迫った。

イコール彼は素でこの馬鹿ではすまされない程の発言をしているのだ。


「…いや、ハローですけど、読んだらヘロゥって読むんです。h.e.l.l.oなんです!」

「は?それならヘッロになっちまうだろ」

「なんでそこだけ読めるんですか。いや、読めませんからね!?」


瑞希は泣きそうになっていた。
心の中は「もう無理、マジで無理」とリフレインしていた。


「うーん、でもなんだろう。ちゃんと勉強すれば普通にいい点数とれると思うんですけどねぇ」


「…A組の授業はハイペース過ぎるし、かといって諒達は天才だから……蒼とか『なんでそうなんの?』って聞いたら逆に『なんでそうならないの?』って返されたからな!?分かるわけねーだろ!」

「…あぁ、先輩ばかりがわるいと思ってたけど……同情します。天才ってイヤですよね」

「だよなっ!」


翔と瑞希の間に変な友情が芽生えた瞬間だった。


「…そうですね。だいたい先輩の力量は分かったんで勉強メニューでも考えておきます。では私達の集合場所は放課後に図書室ということで」

「あぁ」


翔が素直なので少し不気味に思いながら瑞希は諒達のところに戻った。




「お疲れ」


諒の前までいくとそう言って優しい笑顔と共に労ってくれた。



「…今日は帰ります」

「了解。明日から翔を宜しく」


後からついてきた言葉は無視してまだ部屋の中にいる彼らに挨拶をして部屋を去った。







廊下にでたあたりで聞こえてきた翔の悲鳴らしき声は幻聴だと信じたい。

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