《MUMEI》
First Lesson-対面
「お嬢様ー!」
「どこに居られるのですかー!?」
 7人の侍女たちは1人の少女を探し続けている。
(さっきからずっとここにいるのに…)
 侍女たちの声は少女の頭上を飛び交っている。
「私はここにいるんだけど〜」
「お嬢様!?どちらに居られるのですか?」
(いつになったら学習するのよ)
少女は侍女たちに呆れ果てていた。
(こうなったら…いつもの“手段”を…)
「こっちよ〜」
「こちらですか?」
「そうそう、声のする方に来て」
少女は侍女たちを声の聞こえる方へ集めることにした。
 暫くして、侍女たちが自分の周りに集まった。
「さぁ、見下げて御覧なさい!」
侍女たちは一斉に下を見た。
「お、お嬢様!」
侍女たちの目線の先には、身長145pで長さが膝ぐらいまであるハニーブロンドの髪と蒼い瞳を持つ少女がいた。彼女の名はフローラ・チャーミング。チャーミング伯爵家令嬢で自分の身体に悩みを抱えている。
「これで何回目なの?どうして7人もいて誰一人気付かないの?そんなに私がチビだって言いたいの!?」
 侍女たちは皆身長が170pを越えているからか、身長の低いフローラに気付かない。そのことに彼女は呆れ果てていた。
「申し訳御座いません、お嬢様」
「…で、何があったの?」
「お父様がお呼びです。“すぐに私の部屋に来なさい”と仰っていました」
「わかった。すぐに行くね」
(突然呼び出すなんて何かあったのかしら?)
 フローラは不思議に思っていた。
フローラの父、レオナルド・チャーミング伯爵は、治療費を一切とらない貧しい人々のための医者で、国中を旅し続けている“旅医者”だった。そのため、彼の妻にして助手であるアイネと家を留守にしていることが多く、家にいるのは年末年始を除けば4ヶ月に5日ほどしかない。
だが先日、今日の“重大な用事”のために帰宅してきた。
(いつも忙しくて食事のときぐらいしか話さないのに)
レオナルドは自室で書類やカルテの整理で忙しく、食事中以外でフローラと話をすることはよっぽどのことがないかぎりほとんどない。
(きっと“重大な用事”があったんだろうな…)
このとき、フローラはその“重大な用事”に自分が大きく関わっているなんて考えもしなかった。


* * * * * * * * * 


フローラはレオナルドの部屋の前に着いた。
 家の中では誰かの部屋に入る時は必ずドアをノックすることが義務付けられている。それにしたがい、フローラは軽くコンコンとドアをノックした。
「お父様、入っていい?」
「どうぞ、早く入っておいで」
 そっとドアを開け、部屋の中に入る。
「!!?」
「フローラ、そんなに驚いて…どうしたの?」

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