《MUMEI》

side.H


ベットに寝転がってぼーっとしていると携帯がブブブっと振動する。
液晶に映された“宮地さん”の文字。

慌ててベットの上で正座をする。



“よお、顔真っ赤だったから気になった。
 特に用事はないんだ。ただそれだけ。
 風邪治しとけよ。”


「〜〜〜っ」

花宮は声にならない悲鳴をあげて無自覚は恐ろしい、と切実に思った。


嬉しさのあまり震える手で返信を打つ。



“お気遣いありがとうございます。
 風邪ではないので大丈夫です。”


送信ボタンを押すとまた携帯を枕元に投げる。



明日、どんな顔をして学校に行けばいいんだ……。




かっこいい1つ上の先輩。
バスケもできて後輩の気遣いも忘れない。

そして何より自分を悪童とは呼ばなかった。



初めは秀徳のいい先輩としか思わなかったが今は違う。憧れなんかじゃない、恋心。




自覚したと同時に、花宮は絶望する。


第一、自分は悪童だ。口に出さなかったとはいえ自分はいいようには取られないだろう。

そして男同士であること。あんなに顔がいいのに女にモテないわけがない。男の自分が告白したところで気味悪がられるだけだ。


それなら、このままの方がいい。


いつの間にか視界が歪んで頬に水滴が流れる。







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