《MUMEI》 神名晴の話。その12「……劇的だな」 「……でしょ」 語り終わった。 少し……いや、すごく、半端なく恥ずかしい……。 「でも名字変わってないんだな」 「うん。名字は変えたくないって晴姉さんが言ってね。ワケは聞いてないけど」 ちなみに叔母さんは晴姉さんの結婚には無干渉だった。 僕らには関心がない、というか、興味がなさそうだ。 式は挙げていない。 そんなお金は無いって晴姉さんが自ら言っていた。 そんなこと、気にしなくたっていいって、天馬さんも言っていたのに。 それでも晴姉さんは、首を縦には振らなかった。 我が家に天馬さんが来て、もうすぐ一年が経つ。 あっという間に過ぎた。 また、5人で集まれるなんて、あの頃は夢にも思わなかったけど……。 今目の前には、響介がいる。 この日常がまた戻って。 またみんなと遊べるようになって。 こんな日常がもっと続くように。 変わらないように、と。 小さく、祈った。 前へ |次へ |
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