《MUMEI》
水原 宗明(1)part1
<バカは暴力しか能がないんだろうな。だって言葉を使えないんだもの> ――――――――――― 〜とあるスラム街にて〜 ドンッ!ガラガラガラ…「オラッ!どこ見て歩いてんだガキ!大事な荷物が崩れちまったじゃねぇか!」
「……………」
「何か言うことあんだろうがよぉ!」
ドスッ!ドゴッ!バキッ!
男は余程かんに障ったのか、執拗に子供を殴り続ける。
「……………ッ」
「ああ?何黙ってんだよ。殺されてぇのか!」
「……………」
「テメェッ……!」
そう言うと男はナイフを振り上げる。振り下ろそうとしたその刹那
ガシッ
「おい、その辺にしておけよ」
「ア、アニキ…」
「俺達はこんなボロボロのガキを殴れと命令を受けたか?」
「いや……ただそのガキがよぉ…」
「ごちゃごちゃ抜かす暇があんならさっさと散らばった荷物を集めやがれ!」「わかったよ……」
男が荷物を集めている間、「アニキ」と呼ばれた男は子供に話しかける。
「うちの弟分が世話をかけたな。立てるか?」
「……………」
コクリと頷くと子供は立ち上がる。そして一礼すると、その場を立ち去ろうとする。
「あ、おい、待てよ…」
<アニキ>は子供に手を伸ばし、肩を掴もうとしたがその子の被っていたフードを引っ張ってしまう。露わになった顔――その子供は少年だった――を見て、<アニキ>は息を呑んだ。
なぜなら、疲れきっているのだろう、という程度には雰囲気でわかるが、それ以外にはいっさいの感情が読み取れなかったからだ。
驚いて声も出ない<アニキ>を前に、少年は改めて「助けて頂いてありがとうございます」とだけ言うと、今度こそ立ち去って行った。
「…アニキ、…アニキ!」 と呼ぶ声にハッとして気がつくと先程の男が荷物の整理を終えたところだった。
「どうしたんすか?ボーッとして。急がないと遅れますぜ」
「いや……なんでもない。というか遅れそうなのはお前のせいだろう」
「はっ!?しまった!このノリでアニキに罪をなすりつけようと思ったのに……」
「お前……バカだろ」
ダラダラとしゃべりながら、2人は荷物を積む。 車に乗り込む直前、<アニキ>はちらりと近くの張り紙を見る。そこにはこう書いてあった。
―――人を探しています―――

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