《MUMEI》

他人の瞳は冷たい。いつだって自分を優先してしまう。多数の意見に持って行かれる。



低いものを見付けては嬉々として、気持ちの悪いものを見付けては卑下して、皆に揃えては安堵する。

樹は常に堪えていた。まだ小さな体を震わせながら考えることを放棄した。

抵抗から、許容へ。





学校に行けだなんて誰が決めたのか。母を裏切ったようで辞めるなんて出来なかった。
また、弟達に心配かけることも出来ない。


許して受け入れればいいだけだった。

元々話さない部類だ。それが普通だと思えばいいのである。

誰かのために生きることは気持ちがいい。樹は家族のために生きている。

欠席の斎藤アラタの机を見た。




彼が自分に考える行為を廃除してくれたなら、全てのものから解放されるかもしれない。

死にたくないけど生を奪われたかった。



きっとアラタには緋が似合うからだ。
あの白い肌をより引き立ててくれる、足の小指に絡むアラタはさながら名画を鑑賞しているようだった。

樹は自分の中の緋に汚せばアラタを捕まえられる気かしていた。



けれどアラタの真白き肌は決して交わらないだろう。神を侵せるのは神のみなのだから。

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