《MUMEI》
一章-誕生日 日常
(何か重いな…)
 4月1日。今日16の誕生日を迎えたばかりの少女-立花 咲耶(タチバナ サクヤ)は身体にのしかかる重みで目を覚ました。ゆっくりと目をあけると身体に碧眼にショートボブの赤毛をもつ、外見からすると4歳ぐらいの少女がのしかかっていた。
「鬼灯…?」
 咲耶の身体にのしかかっていたのは、鬼灯(ホオズキ)という名の鬼の子供だった。
 鬼たちは今2つの派閥に分かれている。人間との共存を望み、酒呑童子討伐を図る角のない鬼と、酒呑童子を中心する角のある悪鬼。
 咲耶と出会ったとき、鬼灯は悪事を働いていたため角が生えていて、人間に攻撃されて身体中傷だらけだった。そんな鬼灯を咲耶は傷の手当てをし保護した。人間の優しさを知った鬼灯は以後悪事を働かなくなり、額に生えた角はいつの間にか消失したいた。
「遅刻スルヨ?」
 目覚まし時計はいつも家を出る時間を指していた。
「やだ、遅刻しちゃう!」
 咲耶は大慌てで学校へ行く支度を始めた。
「間に合わないよ〜っ!」
「鬼灯、支度手伝ウ」
「ありがとっ!」
 ―10分後。
「行ってきます!お留守番お願いねっ」
「鬼灯、イイ子ニシツル。帰ッテ来タラ遊ンデ?」
「いいよ!いっぱい遊ぼうねっ!」
 咲耶は大急ぎで家を飛び出した。



「なんとか間に合った…」
 予鈴が鳴る寸前で2年2組の教室に辿り着いた。
「咲耶、今日もまた寝坊したの〜?」
 「神無!」
 咲耶と同じくらいの身長の女子生徒が咲耶の方に寄って来た。彼女は酒井神無(サカイ カンナ)。咲耶にとって唯一の親友。どこか人間離れした雰囲気を持っているからか、あまり人が寄ってこない。
「だって…」
 咲耶はどういうわけかここ数日前から、天邪鬼と呼ばれる、角生えた小さな鬼に襲われるようになった。鬼灯となんとか彼らを追い払っているが、そうするとかなり体力を消耗するため、疲れがとれず寝坊するようになってしまった。
「しかも、毎日でしょ?ヘンな薬でも飲んだ?魅力的な薬とか」
「飲んでない!化け物にモテる薬なんか飲みたくないよぅ」
 咲耶は半べそをかいた。
「わかってるって。冗談だよ」
「どうしたら襲われなくなるかなぁ…」
「そうね〜…。」
 ―べしっ!
「いったぁいっ!」
 咲耶は神無のデコピンを食らった。額の中心辺りがジンジンとして痛い。
「神無のばかぁ…」
「ちょっとしたおまじないよ?咲耶に悪い鬼さん達が寄り付かなくなるおまじない」
「それにしても痛いよぅ!」
「その痛さがおまじないが効いている証拠なの。あまりにも痛いのが続くようなら冷やしなさいな」
(こんなので本当に効くのかなぁ…)
 咲耶は半信半疑だった。ただひとつ、神無のおまじないの効果なのか、咲耶の眠気は痛さで一気に吹き飛んだ。

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