《MUMEI》

少女の一撃が男が構えるより一瞬速かっただけだった。

そして、少女は目の前に倒れている男にたずねる。
クロカリ「すまないが教えてくれないか?その[空色の大剣]が何処に行ったかを。」

その質問に男は、
ラクール「まあ俺の負けだからな。約束は約束だし、教えてやるよ。」
と言った。

ラクール「確か奴にあったのは一ヶ月くらい前だった。その時は今日の様にこの町の景色を見てたんだ。そしたら下っ端の一人が殺られたのを感じてな。その気配がある場所までちょっと出向いてみたんだ。で、そこにいたのが綺麗な空色って言うのか?まあそんな色をした大剣を持っている奴にたまたま出会ったってわけ。」

クロカリ「それで、そいつはどういう顔をしていたんだ?」

ラクール「…まあどういう顔をしていたって言う質問の意味はわからんが、20くらいの青年って感じだったな。」

クロカリ「やはりか…」
その男の答えに少女は少し残念そうにそう言った。

ラクール「じゃあ続きを話すぞ。そいつは俺と目が合ったときにこう言ったんだ。
「お前がこの魔物の親玉か。」
てな。俺はそうだって答えた。するとそいつは何も言わずにいきなり襲いかかって来たんだ。それで最初はなんか弱くってな、こんなくらいなら余裕で勝てると思ったんだ。でもな、そいつが何をしたかはわからねえ。けど気がついたら俺は傷だらけで倒れてたんだ。で、倒れてる俺の前にそいつは立っていた。んでもって俺にこう言ったんだ
「お前は弱い。とどめを刺す気もうせた。悔しいか?悔しいだろう。悔しかったら覚えておくんだな。この[空色の大剣]の名を。」
てな。」

クロカリ「それでそいつは何処に行った?」
ラクール「実はな、何処に行ったかは俺にもわからねえんだ。」

クロカリ「そうか…」

ラクール「俺からも質問いいか?」

クロカリ「なんだ?」

ラクール「お嬢ちゃんは何モンだ?」
その男の質問に少女はキョトンとしていた。

クロカリ「何者?」

ラクール「人間じゃ身体能力にも限界がある。でも嬢ちゃんはその限界を遥かに超えてる。まるで、俺たちとなんら変わんねえ。」

クロカリ「私は…人間であって人間でない。」

ラクール「というと?」

クロカリ「私は人間と魔物のハーフと言えばわかるか?」

ラクール「なんだって!?」

少女の言葉を聞いた男は仰天した。

ラクール「そ、それはどういう…」

クロカリ「話せば長くなるが…。」

ラクール「話してくんねえか。」

クロカリ「わかった。隠す必要も無いからな。人間と魔物のハーフと言うのはちょっと違うな。私はある魔物の血を植え込まれた人間だ。だから見た目とかでは普通の人間となんら変わらん。だが、貴様等とも何も変わらない。そして私の様なもののことを[闘魔]や[ダークキル]、[ハーフソウル]などとよばれる。ほかにもある程度実力のあるものには[空色の大剣]などの様に通り名がつく。」

ラクール「そうか…」

男はそう言うと立ち上がり、覚悟を決めた様な目で少女を見た。

ラクール「これで満足だ。負けたものは死あるのみ。俺にとどめを刺せ。」

クロカリ「…………。」

男のいきなりの発言に少女はしばらく黙っていた。

ラクール「どうした。さっさと俺を殺せ。」

クロカリ「そんなに死にたいのか?」

ラクール「負けたのに生きているのは惨めだ。いっそこのまま死んだ方がましだ。」

クロカリ「そうか…」
そう言いながら少女は男に近付く。

そして…




少女は男の顔を殴った。

少女は男を殺さなかった。

ラクール「なんで殺さなかった!!」

クロカリ「命の選択権は私にある。負けたからと言って死を選ぶのは間違っているぞ。」

ラクール「だが俺は魂喰という組織の魔物だ。俺は魔物である限り人間の命を喰続ける。それでいいのか?」

その男の質問に少女は
クロカリ「契約って知っているか?」
と返した。

ラクール「契約?」

クロカリ「私もよく知らないんだが、人間と魔物はある契約をするとその人間と魔物で魔力を供給できるという。」

ラクール「その契約を誰がするんだ?」

クロカリ「私と貴様で。」

ラクール「!?」

当然男は少女の発言に驚いた。

ラクール「俺と契約して嬢ちゃんに何の得がある!?」

クロカリ「まあ魔力の供給ができれば貴様が人の命を喰らう理由も無いだろう。」

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