《MUMEI》

「きゃんっ!」
 バニラは仰向けに寝転がってフローラに「もっと!」と甘えたそうに舌を出しながら彼女を見つめはじめた。
「レオンさん、どうしよう!?バニラ仰向けなっちゃった!今までこんなことなかったのに…おかしくなっちゃったのかな?」
「お腹辺りを触ってごらん?」
 フローラはレオンに言われたとおり、バニラのお腹辺りを触ってみた。バニラは何ひとつ抵抗せず、ただ気持ち良さそうにしているだけだった。
「バニラ、おかしくなっちゃった〜っ」
 フローラはバニラの反応に対してどうしたらいいかわからなくなってしまった。
いくら触ってもバニラは気持ち良さそうにしているだけ。どんどんフローラを不安にさせていく。
「そんなに触っても抵抗しないなんて、どんなに仲がいいんだ?」
 しばらくしてレオンはフローラとバニラの様子を見ていた。
「普通、お腹や脚を触ると嫌がるはずなんだ。でもそんなに触って抵抗しないのは…バニラはフローラのことが大好きだから、なんじゃないかな?」
「え?」
 レオンはバニラのお腹をつついた。するとバニラは起き上がり、唸って彼を威嚇しはじめた。
「普通は怒ってこうなる」
 バニラは牙と敵意を剥き出しにして怒っている。
「バニラ怒っちゃダメ」
 フローラはバニラのレオンへの怒りを宥めようと首辺りをくすぐった。
「くぅん?」
 どうやらレオンへの怒りは収まったらしい。バニラはちらっと彼の方を向いたがすぐにぷいっと目線を逸らした。そしてすぐにフローラの方を見つめはじめた。
「嫌われたかもな」
 レオンは苦笑した。
 フローラはそんな彼らを見て、くすりと微笑んでいた。

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