《MUMEI》 真実「立花咲耶、アンタのことだ」 朔夜の眼はしっかりと咲耶のそれをとらえていた。その真剣な眼差しに咲耶は射竦められた。 「はぁ?何言ってんの!?」 咲耶は驚愕し、耳を疑った。 「私、どこにでもいるような女の子だよ!?」 「全く…アンタは何ひとつ知らないのか」 朔夜は無知な咲耶にあきれてしまったようだった。 「知ってるわけないじゃない!第一、“巫女姫”だとか、訳わからない!」 「…なら、おしえてやるよ」 「…?」 「酒呑童子、源頼光、紗々姫の何れかはきいたことがあるか?」 「全部知らない」 「まぁ、過去の話からな。今から1000年前…酒呑童子をはじめとする悪鬼達によって人間は存続の危機に陥っていた」 「人間が絶滅するってこと!?」 「まぁ、簡単に言えばそうなる。で、土蜘蛛を討伐したことで有名な源頼光は人々を彼らから救うべく、酒呑童子を討伐することになった。しかし、彼は妖力が強すぎて首を刎ねるだけでは消滅しない。つまり、その強い妖力を消失させる必要があるってこと。」 「私は何も関係ないじゃない」 「関係ある。…で、当時妖力を持つ純潔の女性-紗々姫の血が必要になった」 「やっぱり関係ないじゃないの!」 「最後まできけ」 「うぅ…」 「源頼光は紗々姫を見つけだし、彼女の協力を得ることはできた。しかし酒呑童子討伐を翌日に控えた夜、彼女は原因不明の病により病死してしまった。」 「…」 「翌日、源頼光は酒呑童子の首を刎ねることに成功するが、その首を酒呑童子の有力な僕-茨木童子に盗られてしまったんだ。その後、当時有名な奇蹟の予言者は言ったのさ」 『984年後、紗々姫様の来世がお生まれになる。その来世が16になり17になるまでが、酒呑童子討伐の最後の機会となるだろう―』 「つまり私の前世は紗々姫様だったってこと?」 「そういうことだ」 「でも…」 「何か気になるのか?」 「どうして茨木童子はすぐに私を殺そうとしなかったのかな?」 「アンタの血は酒呑童子を滅ぼす力だけでなく、復活させる力をもっているからな。だから俺も他の鬼も悪鬼もアンタの名前を知っている。悪鬼は酒呑童子の復活を望んでいる。 一方で人間との共存を望む鬼は酒呑童子の消滅を望んでいる。すべてはアンタ次第なんだよ」 「朔夜はどうしたい?」 「俺は…アンタら人間と共存したい。幼い時、人間に助けられたことがあって、な」 「その人は今どうしているの?」 「知らない。顔は覚えていないし、名前すら知らない。…ただ、次会った時には恩返ししたい。…アンタはどうなんだ」 「私は…」 前へ |次へ |
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