《MUMEI》
後悔
「いきなり前世がどうとか言われて動揺しているんだろ」
「うん、…まだわからない」
 ―ポタリ。
 咲耶はふと鬼灯のことを思い出し、涙の流しはじめた。
「…どうした」
「あの時…私何もできなかった。だから…鬼灯は」
 ―死んだ。
 咲耶はそう言おうとした。
「っ」
「アンタのせいじゃない」
 しかしその続きは、唇にあてられた朔夜の人差し指によって制される。
「咲耶は何も悪くない。だから自分を責めるな…」
 朔夜は咲耶の唇にあてていた指をそっと離した。
「でも…」
 咲耶は自分が許せなかった。鬼灯に何もできなかったという事実は変わらないのだから。
「そのままじゃ何も変わらないだろ」
「…わかってる。けど、どうしたらいいの?私に何ができるっていうの?」
(私は超能力者でも、魔法使いでもない、ただの人間なのよ…?)
「鬼灯は何を望んでいた」
「私が家に帰ってきたら一緒に遊びたいって」
「それ以外は?」
 生前、鬼灯は咲耶に自分の夢をおしえてくれた。
(あの時、何て言ってたっけ…?)
 夢を言っていた時の溌剌とした笑顔は思い出せるのに、夢はなかなか思い出せない。
(…!!!)

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