《MUMEI》 「あんた、こんな早くから動くんだね」 翌日、陽も明けきらない早朝 何気なく表をぶらついていた片岡へ背後から声が掛る 誰かとそちらを見やればソコに 以前片岡の頬を張ったその相手が立って居た また何の用なのか 言われたソレに何の反応も返さず、相手を唯見やる 「……この間は、悪かったね。叩いたりして」 ついカッとなって、と頭を下げてくる相手 以前とはまるで違うだやかなソレに 片岡は何事かあったのかと警戒してしまいながらも、一応首だけは横へと振ってやった 「……一つ、聞いても構わんか?」 それから暫くの無言の後、片岡が話す事を始める 相手は何かと返し、そして片岡は徐に問う事をしていた 「……天道虫ってのは、一体何なんだ?」 「ソレを聞いてアンタ、どうするんだい?」 「別に。唯、何となくだ」 ソレを聞くことが出来れば、七星が何故自分の処に来たのかが解るかもしれない、と 片岡はつい尋ねる事をしていた その意図を理解したのか相手は溜息を吐き そして話す事を始める 「私達天道虫は、お天道様の使いだよ」 「使い?」 「そう。お天道様の御心のままに動く駒。それが私達天道虫だ」 その価値は各々がもつ星の数によって異なり、待遇もまた違ってくる そう続けながら相手は自身の星を指でなぞりながら 「星の数が多い程、お天道様に近づける。その中でも七つ星は最もお天道様に近いんだ」 嘲笑なのか、微笑なのか解らないソレを浮かべて見せた そして片岡を正面から見据える事をすると 「アンタがどういうつもりであの天道虫を近く置いてるかしらない。でも」 此処で一度言葉を区切り、片岡の着物の袷を手荒く引きながら 「このままだと、アンタ死ぬ事になる。多分、近いうちにね」 不吉な言葉を片岡の耳元へと呟き、相手は手を話した その意味を理解しかねる片岡は怪訝な顔 だが相手はそれ以上何を言う事もせず身を翻す 一体、何が言いたかったのだろうか 分かる筈もなく、片岡もまた身を翻すと家路へと着いたのだった…… 前へ |次へ |
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