《MUMEI》
な、何も記憶がねー!!
俺…、あれ…、あれ…。
「あ、あの…」
「…ん?」
伊藤さんは俺の背中を擦り始めた。
その柔らかい、あやす様な触り方…、
めっちゃ溶けそうになる!
ヤバいって…それ…
声…でちゃうよ……
「…ンっ、はぁ…、」
やっぱり耐えきれず
吐息を漏らしてしまった。
恥ずかしいよ、恥ずかしい…。
俺は恥ずかしくて思わず…伊藤さんの胸に余計に…埋まった。
「ゆうちゃん…キスしよ?…昨日みたいなの…、さ…」
伊藤さんは俺の顎を優しく掴むと、そっと持ち上げてきた。
するとそこには切なそうに俺を見つめる伊藤さんが居て…。
――俺の胸が何故か
キュンと…した。
ドキドキする…、
…何?
気持ちが…ふわふわする…。
何…これ…?
すると伊藤さんは眼を瞑り唇を近づけてきた…。
うわ!
ダメ!!
だ、だから何で、
何でこんなことに!!
「あ、あ、あの!」
「…何だよ」
「えっと……えっと……と…」
伊藤さんはすんでのところで止まっている…。
どうしよう…何か、
何か言わなきゃ…
「えっと、と、と、トイレ…」
すると伊藤さんはすっと眼を開け、俺をじっと見つめながら
「戻って来いよな…」
そう言うとチュッと短いキスを俺の唇に落とし、俺を…解放した。
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