《MUMEI》
※朔夜目線
 咲耶が階段を下って行った後、何かの気配がした。だが、気づいたのが遅かった。
「動くな。動けば貴様の命は無いぞ?」
 見知らぬ、クラスメイトではない男子が俺の首筋に小刀を突きつけている。
 彼からは悪鬼独特の禍々しい妖気が感じられない。おそらく人間だろう。我が身を拘束する力は、直ぐに振り解くことのできるぐらい弱い。
 だからと言って、少しでも身動きを取れば、コイツは突きつけた小刀を滑らすだろう。そうなればひとたまりも無い。
「オマエは誰だ」
「貴様のような妖怪に名乗る義務はない」
 コイツ、舐めてんのか。オマエは何様なんだよ。
「まぁ、いい。お前に選ばしてやるよ」
 何を。
 戯れはそのぐらいにしろ。
「このまま斬られるか、自分で斬るか、選べ」
 殺られるか、殺るか、か。
「そんなに俺を殺りたいか」
「あぁ。貴様は妖怪、悪鬼だからな」
 ―――ブチッ!!!
「俺は悪鬼じゃねぇよ」

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