《MUMEI》 「久世です」 4回、リズムよくノックして言う。確かノックの回数はこれでよかったはずだ。ヤマトの平然とした「入れ」の3文字が聞こえた。 「やっ……ヤマト?」 「何だ」 ーー言いたいことが、全てどこかに飛んでしまった。またドギマギとしてしまう。 「――何もないなら戻れ」 「えっ…あ……」 嫌だ。でも言いたいことは未だ思い出せずにいる。このままじゃこの部屋から出なくてはならない。何のために入ったのか意味がなくなってしまう。 「ちょっと待ってくれないか?話がしたいんだ」 「だから、待っているだろう。いつまで待たせる気なんだ」 ああ、イラついてる。早く、早くしなきゃ。何か言わないと…! 「好きだっヤマト!!」 勢いまかせに声を張り上げて言う。 「――っ!!」 慌てて口を両手で塞いだ。今のオレは相当頬を朱く染めているだろう。これは大失敗だ! そっとヤマトを見ると、彼は表情を一切変えていなかったように見えて、無言。――ヤマト? ヤマトは今の告白をどう受け止めたのだろう。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |