《MUMEI》 白石 小春(1)<私にとってのすべては、この部屋の中ともう一つだけ……> ――――――――――― そこは薄暗い部屋だった。窓も、換気扇もない。扉は重い金属製の扉で、常に鍵がかかっている。下に小さな空気を通すための穴はあるが。あるものと言えば天井に1つついている電灯と、床に散らばった割れた食器に、腐った食べかす。そして部屋の隅っこにあるイタチなら通れるのではないかというほど狭いダクトのような穴と、大量の本。何よりも目を引くのは部屋の中心にある巨大な魔法陣だ。 ここには1人の少女が住んでいるが……今はいない。しばらくすると魔法陣が光り、その中から少女が現れた。少女は扉そばに新しい食事があるのを見つけると、そのまま手づかみで食べ、食器を叩き割り、隅っこの穴へ投げ入れる。どうやらゴミ箱の役目も果たすようだ。食べ終わると少女は呟く。 「はぁ……いつまで続くんだろう……もう死にたいよ……でも自分は壊せないんだよね……」 そして横になる。次に備えて少しでも体を休めるために。 数時間後、唐突に少女は跳ね起きる。部屋の中が異常に明るくなっているからだ。その源は当然、魔法陣である。 (また……始まるんだな……) しばらくすると、鎖が飛び出してきて少女を捕らえると、そのまま光の中へと引きずり込んでいった……… 前へ |
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