《MUMEI》 3翌日、酷く陽光が強い朝だった 酷い頭痛の様なソレに苛まれ、最悪の目覚めの片岡 もう一度寝なおしてやろうと布団を改めて被った、その直後 表戸がけたたましく連打された 「京さん、起きてる!?」 「……起きてねぇ」 「起きてるわね。ちょっと来て!」 有無を言わさず着物の襟を引かれ、そのまま外へ 引き摺り出されたそこで、播磨は見えた景色に絶句した ヒトが、至る所で干からびる様に死んでいるのだ 一夜のうちに一体何がと相手へと説明を求める 「分からないわよ。だって、こんな……」 相手も相当動揺している様で この状態ではこれ以上聞いた処で何を聞き出す事も無理だろうと 片岡は相手の型を叩き、その死体だらけの其処を歩き出した 「……お出かけですか?」 不意に聞こえてきた声 だが片岡は立ち止まる事も振り返る事もせず歩くことを続ける その声の主は六星 それが分かっていたが故に敢えてそうする事をしなかったのだ 「良い景色ですね。実に見事だ」 辺りに転がる死体を悦に入った表情で見回しながら そうは思わないかと片岡へと賛同を求めてくる 何処をどう見ればいい景色だと思えるのか 片岡は六星を漸く振り返り、睨み付けてやった 「あなたは本当に良い表情をしますね。とても楽しいですよ」 「よく喋るな。お前は」 いい加減鬱陶しくなり、つい愚痴る様に言って向ける 六星は嫌な笑みを口元に浮かべながら 「私はね、嬉しいんですよ」 「何が?」 帰ってきた声は不可解なソレ 一体、何が嬉しいというのだろうか? 未だ薄ら笑いを浮かべる六星に、片岡は僅かに苛立ちを覚える 「もう直ぐです。もう直ぐ、お天道様が全てを変えて下さるのだから」 全てを変える その言葉が片岡は気に掛りはしたが 問い質してやるよりも先に、六星は身を翻しその場を後に 暫くその場に立ち尽くしていた片岡 その肩を、背後から伸びてきたてが突然に叩いた 「――!」 弾かれた様に振り返ってみればソコに、先の相手が立っていた どうかしたのかと問うてやれば 「……京さん、何か知ってる?今のって……」 どうやら六星との会話を聞かれていたようで 困惑気な表情の相手に、だがどう説明してやればいいかが解らず 片岡は深く溜息を吐き、相手の頭へと手を置いた 「……なんでもない。気にするな」 誤魔化してやり、片岡は相手へと後ろ手に手を振ると歩き出す 日差しが、強い 目の奥に感じる痛みが段々と頭痛へと変わり 片岡はその煩わしさに舌を打った 「……主、お帰り。どこか、行ってた?」 自宅へと帰り着けば、起きていたらしい七星に出迎えられる 朝餉の支度に忙しく動く七星へ 片岡はまた何でもないを返すと卓へと着いた ソレを確認すると、七星は卓上へと朝食を並べ 向かい合う様に腰を降ろすと、両手を合わせ食べ始める 「……七星。お前、熱でもあるのか?」 ふと七星の方を見やれば、その顔が赤い 額へと手を当てがってみれば、人が帯びる筈のないほどの熱があった 「だ、大丈夫。ちょっと、風邪ひいただけ、だから」 本当に大丈夫なのだ、との七星へ 片岡は音を立て箸を置くと、食事も途中に七星を抱え外へと出る 「あ、主!?」 行き成りなソレに七星は驚き 降ろしてくれと訴えてみるが、片岡は聞き入れる事をしない 結局、、片岡馴染の医者の処へと担ぎこまれてしまう 「おや、片岡さん今日はどうしました?」 出迎えてくれた医者へと状況を説明してやれば 布団へと七星を寝かせる様言われ、その指示に従う 「これはひどい熱ですね」 七星の額へと触れた医者が、その熱に驚きながら処置を始める ヒトに対しての処置が有効なのかと思いもしたが 何も出来ない片岡は、唯々ソレを見守るしかない 「……主。私、行かないと」 「七星?」 途中、七星が突然に起き上がり外へと向かおうとする そんな状態で一体何処へ行こうというのか 片岡が引き止める事をすれば、七星は珍しく聞き分け悪く嫌々をした 「お天道様が、呼んでる。だから――」 片岡の手を振り払い、七星は外へ 「七星!!」 怒鳴って止めようとするが遅く 七星の姿は街の雑踏の中へと消えていってしまう 「……あの馬鹿!」 派手に舌を打ち、片岡はその後を追う 前へ |次へ |
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