《MUMEI》
呪縛
そして心理学者になった今もしっかりとした答えを出せていない。

−−そう答えを出せていないんだ。

私はこの仕事につくようになってから人の心理というものがどういったものなのか、分かった気になっていた。

分かった気になっていたというのは分かっていないということだ。



山本が口癖のように言う言葉がある。

「人は人を殺したら生きていけない」
これは統計的にみても正しかった。

殺人者の多くは捕まるまでに自殺する。
一人殺した後に更に誰かを殺すことが出来る人間はそうはいない。

一人殺しただけで、人間の理性はもうぐちゃぐちゃになっている。

だから自殺する。


それほど人間というものは繊細な生き物なのだ。


だから父が自殺に走ったこともそう不思議なことではない。


−−頭では分かっている。

しかし私も山本も過去の呪縛からまだ逃れられていない。



つまり、これが高科が犯人じゃないと分かった時に思った最悪の答えの理由だ。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫