《MUMEI》
救う
つまりどういうことかと言うと、山本は父の言葉のおかげで、今も真っすぐに「犯罪のない世の中」というものを追いかけることが出来ている。

しかし高科が犯人でないと分かってから状況が変わった。

山本なら犯人が別にいることを証明し、高科を開放することは簡単に出来るだろう。

しかし、高科が開放されればどうなるかといった問題になる。

全ての罪を被り、死刑を受け入れてまで高科には守りたかったものがあるのだ。

高科が「許される」ということになれば、それは父と同じ末路をたどることになると簡単に想像出来てしまう。


そうさせない為に山本は私を頼ったのだ。

私は死んで欲しくないと願っている。
そう、父の時と同じように。


だがどうすればいいのか分からない。

どうすれば高科は救われるのだろう。

6歳の頃に考えたように、罰を与えれば良いのだろうか?

今のまま黙っていれば、高科は自ら死ぬという自由は奪われたままだ。

だがいつまでもこの状況のままいられる訳はない。

後6日。

それまでに、本当の意味で高科を助ける。

それが私と山本にとっての、父への罪滅ぼし、そして私達が求める理想世界がそこにあるはずなんだ。

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