《MUMEI》

 
 
 


「 ね、じろー……?」
七生が俺の頬に触れた。わずかにびくつく。






『やっぱり、違うなって』



フラッシュバックか……、何でこんなときに。


「二郎?」


「あ、うん。 待って」

七生以外に目がいった。部屋の天井や壁にピントが合った。

「…………どうした?」

七生の顔が曇った。悟られたらどうしよう。




「……………………扉」
集中力が切れて周りのことに意識が飛んでいる。
扉が開いてる、確かにあの時閉めたはずなのに。

急に怖くなった。
母さんが帰って来てた?


抱き上げられて床に立たされた。手を引かれる。

「七生……」


「大丈夫、俺がついてるから。」
繋いだ手から七生に包まれてるようで安心できた。




七生を先頭に階段を下りる。居間に続く廊下に出た。
テレビの音声が漏れている。七生は何の躊躇もなく居間に入った。

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