《MUMEI》

ラクール「まあ確かにそうだが、でも契約すると嬢ちゃんが困るんじゃないか?」

クロカリ「何がだ?」

ラクール「何かデメリットみたいなものもあるんじゃないか?」

クロカリ「さあな。そこまでは私にもわからんが……なんとかなるんじゃないか?」

ラクール「俺は別に構わない。一度は捨てた命だし、嬢ちゃんに逆らう理由も無い。だがお前はいいのか?そんなわかんねえ様な契約なんかして。」

クロカリ「まあ確かに命を削る様な契約ならやらない。でもこの契約には命の危険が無いことぐらいはわかっている。それに契約するものの数はいくらでも構わないらしいしな。」

ラクール「あと、俺んとこの下っ端はどうするんだ?」

クロカリ「そこまでは考えて無かったな。全員と契約するわけにもいかんし…。」

二人は考えた。

そして結論、
クロカリ「貴様が死んだと言うことにすればいいと思うが。」

ラクール「でもそれじゃあ人間を襲うのは何もかわんねえぞ。」

クロカリ「それもそうだな。」

……却下された。

ラクール「俺を殺せば済むことだろ。だからさっさととどめを刺せばいい。大体嬢ちゃんは俺たちを討伐することが目的じゃないのか?」

クロカリ「別にとどめを刺すことは目的ではない。それに私は私の手で殺すと決めた相手にしかとどめを刺さない。」

ラクール「……[漆黒の狩人]って言うくらいだから結構簡単に殺すのかと思ったけどな。」

クロカリ「失礼だな。」

ラクール「……いいぜ。俺と契約しても。」

男の態度が一変した。

クロカリ「どういうことだ?」

少女は当然理由を聞く。

ラクール「実はな、魂喰という組織は俺があいつに負けてから大半は俺から離れていったんだ。つまり俺はちょっと嬢ちゃんを試した。すまん。」

クロカリ「でもさっきの魂喰の下っ端は…」

ラクール「残ってるのはあいつと俺を合わせても数人ぐらいしかいねえよ。」

クロカリ「…………」

ラクール「さっき嬢ちゃんに強がりは良くねえとか言ったけどあれは俺自身に言い聞かせてたんだと思う。」

クロカリ「そうか…」

二人はしばらく黙っていた。

そして少女は、
クロカリ「契約するんだな。?」
と一言問う。

その問いに男は、
ラクール「ああ、でも下っ端のことが気にならないと言えば嘘になるな。」
と答えた。

ラクール「でも覚悟はできてる。契約してくれ。」

クロカリ「わかった。」
少女はそう言うと手に持ってる黒く光る刀を男に突き付けた。

クロカリ「では、貴様はこの私に誓え。私を守り抜くと。そして私を裏切らぬと。そして私に命を預けると。」

ラクール「今ちょっと変な台詞があった様な。」

クロカリ「契約の台詞だ。気にするな。
では誓うか?」

ラクール「ああ、誓う。」

クロカリ「契約成立だ。」

少女の持っている刀から黒い光の様なものが流れだし男を包み込む。

男はしばらく苦痛の叫びをあげた。

そして契約は終わった。

ラクール「こ、これで終わりだよな。」

クロカリ「あ、一つ言い忘れたが契約の主である人間が死ぬと契約した魔物も死ぬらしい。まあ私は早々死ぬ様な奴ではないので気にするな。」

ラクール「あの台詞はそう言う意味だったのか。」

クロカリ「これからいろいろあると思うが取りあえずよろしく。」

ラクール「まあ一度は捨てた命だ。誰かのために使うってゆうのも悪くねえな。こっちこそよろしくな。」



気がつくと日が明ける頃になっていた。

こうして人間(?)と魔物のおかしな契約は交わされた。

それはたった一晩の出来事だった。

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