《MUMEI》
出会い〜本物の担当者〜
「はじめまして、若月 叶人(ワカツキ カナト)と申します」
「若月さん…。私…」
「甘月先生ですよね?」
「はい。よろしくお願いします」
 カナは叶人に頭を下げた。
 やはりイケメンを前にするとどうも頭が上がらない。
「そんなに緊張されたら、僕も緊張してしまいます」
「担当者がついたのは初めてなので…」
「僕が貴女にとって初めての担当者なんですね?今まで何人かみてきましたけど、貴女が一番若くて可愛らしいです」
 叶人はニコッと微笑んだ。
(わぁ…、眩しすぎる…!)
 カナは叶人の微笑みに見蕩れてしまった。やはりイケメンには笑顔がよく似合う。
「あの…」
「先生、どうかなさいましたか?」
「さっそくですが、次作の打ち合わせをお願いします!」
 カナは次作について切り出した。
「僕が貴女を訪ねた一番の目的ですね。どのようなジャンルの作品を執筆なさいますか?」
(エッチな小説、つまり官能小説。それを言うなんて恥ずかしすぎる…!)
「……小説…」
「もう一度お願いします」
「官能小説…。濡れ場を生々しく書きたいんです!」
 叶人はカナの回答が衝撃的発言にきこえたのか、開いた口が塞がらなかった。
「でも、濡れ場がうまく書けないんです。読者さんからの感想メールには“濡れ場のリアリティがひと味足りない”って書かれてて…。リアリティを向上させるにはどうすればいいでしょうか?」
「…。とりあえず、今までの作品を拝見させていただけますか?」
「はい」
 カナは1ヶ月前に発売した作品を叶人に渡した。彼はそれをパラパラと読んでいく。
「…」
 叶人は何か深く考え始めた。
(文章に違和感があったのかな…?)
 カナは不安になりはじめた。叶人が何を考えているのか、気になって仕方がない。
「甘月先生、貴女って…」
 叶人は漸くして、口を開いた。

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