《MUMEI》
私の全てを。
「はあぁあああ!?」
ちょっと待て色々とおかしい。
殖野さんは巧みに僕のボタンを外していく。
上半身裸体になったところで、僕の乳首をなめ回す。
未だに僕は混乱状態。
そしてついにカチャカチャと僕のベルトにまで手をつけた。
これは
あかん
やつや
「だから!僕には彼女いるからダメなんだってば!」
引き剥がすだけじゃ通用しない。
もう突き飛ばす。
そして後退りし、毛布を彼女に被せる。
「……私のこと、嫌いですか?」
「それ以前の問題なんだって!そりゃ僕だって興奮とか……し、したけど!でも会って間もないのにこんなことできないよ!」
それに罪悪感が半端ない。
「人肌寂しいのはわかったから!でも他を当たってくれ。僕にはできない」
殖野さんはしょんぼりと「そう……ですか……」と呟いた。
「でも……できれば自分の体は大切にしてほしい」
殖野さんは、え…………、と顔を上げた。
「……まだ若いんだし、誰でも良いとかって言わずに、ちゃんとこの人って特定した方が……今より多分良くなるよ。環境も。君自身も」
説教とかするつもりはないけど、言いたかったことを言い終えた。
そしたら…………涙を流していた。
「うぇい!?」
「こ、こんなこと……初めて、言われました。みんな私の体目当てで……私自身の幸せを考えてくれる男性なんて……私……初めてで……」
……………………。
とても、可哀想に思えた。
「殖野さ……」
「ますますあなたのことが大好きになりました」
……………………。
「はあぁあああ!?」
全裸のまま抱きついてきた。
「あなたになら、私の全てを差し出します」
「ちょ、待ってくれ!色々とおかしいよね!?」



「………………………………、なにしてんの?」




「あ、店長」
クビになった……。

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