《MUMEI》
借り物競争
「それでは、徒競走を始めまーす!
 選手の皆さんは位置についてくださーい!」

―いよいよ春の大運動会が始まった。
今日の天気は快晴で、絶好の運動会日和となった。



「…えー、始めようと思ったのですが、
 三年ろ組の神崎左門選手と次屋三之助選手がスタート位置に辿り着けなかったので、
 徒競走を終了したいと思います。」

…なんでスタート位置に辿り着けないんだよ。

「次の種目、借り物競争に出場する選手のみなさんは
 集合して下さーい!」

あ、私借り物競争出るんだった。
さて、行こうか! 



「ただいまより、借り物競争を始めまーす!
 まず、ルールを説明します。
 スタート地点からしばらく走ったところに紙が置いてあります。
 その紙を拾い、借りるものを書いてあるので、
 それを誰からでもいいので借りてきて、ゴールを目指して走って下さい。
 ちなみに、借り物のなかには人や動物も混ざっています!

 それでは行きますよ!
 よーい、どん!」


借り物競争なら勝てるかも!絶対1位になってやる!!


よし!紙だ。
えーと、なになに…。

  「割り箸を常備している人」


…これはもうあの委員会しかいないだろう。

私が周りを見回すと、そいつはすぐに見つかった。


生物委員会委員長代理で、五年ろ組の竹谷八左ヱ門だ。
『八左ヱ門、ちょっと来て!!』
「え!!?いきなりなんなんですか!?」
『あんた、借り物なんだって!!
 ほら、こんなのあんたら生物委員会くらいでしょ!!』

そういって、私は急いで紙を見せた。
八左ヱ門は納得したらしく、渋々私に連いてきてくれた。

あとはゴールに向かって走るだけ!そう考えていたときのことだった―。


「いけいけどんどーん!!!」
突如として、後ろからすごい勢いで叫びながら走ってくるものがいた。
六年ろ組の七松小平太だ。
さすがというべきか、スピードが尋常ない。


「うわっ!七松先輩だ!
 やっぱ速いな。でも、この距離なら…!
 華村先輩、行きますよ!!」

そう言って、八左ヱ門は私の腕を掴み、一生懸命走ってくれたのだった―。



『ありがとう!八左ヱ門!
 八左ヱ門のおかげで勝ったよ!!』
「いやいや、俺だけの力じゃないですから。
 華村先輩もがんばったからですよ!」

こうして、私は見事借り物競争で1位になることができました!

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