《MUMEI》
ハジメテ
 ―――ドサッ!
 カナは叶人に押し倒された。
「…待っていたよ。早かったね」
 叶人はそっとカナの額に口付ける。
「〜っ!!!」
 顔がいっきに熱くなる。逆上せてしまいそうだ。
「どうしたの?そんなに紅くなっちゃって…可愛い子」
「ひゃあっ!」
 叶人はカナの耳元で囁いた。
「耳が弱いの?なら…」
 ―チュッ
「あんっ」
(ダメ…変な声が出ちゅう…!)
 叶人がそっと触れてくる度に、甲高い、自分の声なのにそうでないような声が漏れてしまう。それが嫌になってカナは口を閉じる。
 しかし叶人はそれを許さなかった。親指をカナの口の中に滑り込ませ、彼女の舌を撫でていく。
「口閉じないで。そんなことしたら苦しくなるよ?」
 叶人の親指がカナの舌を弄ぶ。ただ舌を触られているだけなのに、声が漏れそうだ。
「ゆひ…ふひて…!」
 カナは必死に叶人の親指に抵抗する。抵抗すればする程、唾液が溢れて零れ落ちそうになってしまう。
 とうとう唾液は口の中に収まり切らなくなり、口から零れて、叶人の指を伝ったり、顎を伝いカナの首筋に垂れた。それでも叶人は彼女の舌を嬲り続けた。
 ぴちゃぴちゃと音を立てるようにしたり、親指を舌の下に潜らせて溢れた唾液を口の外に垂らそうとしたり。カナの舌を攻めあげる。
 そのたびにカナは漏れそうになる声を必死に抑えようとするが、それでも時々声が漏れてしまう。
「そんなに舌を弄られるの好き?」
「ひあ!」
「嫌?こんなに涎を垂らしているのに?」
「〜〜〜っ」
 カナは懇願するように叶人を見詰めた。
「しかたない…抜いてあげるよ」
 叶人はカナの思いを察してくれたのか、彼女の舌を嬲り続けた親指を抜いた。
「これが嫌なら、口を閉じないこと。いいね?」
「…はい…」
 カナの舌はやっと叶人の親指から解放された。
(やっと、指抜いてもらえた…。それでよかった、はずなのに)
 叶人の温もりが離れたせいで、何かものさびしく感じていた。
(もっと触ってくれないの?)
 叶人の温もりを求めて、カナの身体中がうずうずしはじめる。
(もっと触れてほしいところがあるのに…)
「そんなにモジモジしてどうしたの?触ってほしいなら…」

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