《MUMEI》
二人三脚
「一年生によるクラス対抗玉入れの結果を発表します!
 い組 20個、ろ組 25個、は組 30個!
 優勝は一年は組でーす!!おめでとうございます!!」

一年生の各クラス代表4人で行う玉入れ。
見事、実践に強い一年は組が優勝した。
私の所属する火薬委員会顧問であり、一年は組教科担当教師でもある土井先生も大喜びだ。
本当に微笑ましい光景だ。



「次は、二人三脚です!
 ペアの一人に紐を渡してあります。
 もうすぐ始まりますので、集合して下さーい!」
え〜と…、私のペアは…。

「おーい!千鶴ー!」 
後ろから私を呼ぶ声がした。
声の主は、六年は組の食満留三郎だった。

「俺がお前の二人三脚のペアだ。行こうぜ!」
『うん!』

「歩幅とか大丈夫か?」
『なんとなくわかってるよ、幼馴染だし。』
「そうだな。」


「それでは、二人三脚を始めます!
 位置について!よーい、どん!」

よし、留三郎の足を引っ張らないように頑張ろう!
そう思い、走っていた時のことだった―。

『…いたっ!』
突然、足が痛んだ。
おそらく伊作と穴に落ちた時のものだろう。
しかし、このままでは…。


「おい、大丈夫か?」
『…うん、大丈夫だよ。』
「・・・・・・。
 はぁ、よし!行くぞ!」
『え!?』
留三郎は、私たちの足を結んでいた紐を外した。


気付けば、私は留三郎に抱きかかえられていた。
しかも、お姫様抱っこで…。

『ちょっと、留三郎!?』
「お前が無理してんのが、わからないわけないだろう?
 幼馴染なんだから。」
留三郎にはわかってしまったようだった、もう走るのもつらいことを…。


「食満留三郎選手、華村千鶴選手!トップでゴールしました!」

「やったな!千鶴!」
『うん、よかったね!留三郎!』

「えー、食満留三郎選手・華村千鶴選手ペア。
 紐を外したため、反則とします。」

「えええぇぇ!?」
『ごめん、留三郎。私のせいで…。』
「まあ仕方ないさ。
 俺のほうこそ悪かったな、
 …そ、その…抱えちまって…///」
そう言った留三郎の顔は、少し赤かった…。



   〜医務室〜

「ごめんね、千鶴。
 僕のせいで…。」
『伊作は悪くないよ。むしろ、かばってくれてありがとう。
 留三郎もついてきてくれてありがとう。』
「構わないさ。それより、大丈夫か?」
『うん、ただの捻挫みたいだし。』
「当て木をしておけば大丈夫だよ。」
『ありがとう。』


―こうして、私は応急処置を受けた。

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