《MUMEI》
願い《立花仙蔵》
私が中庭を歩いていると、一年は組のよい子達と土井先生がなにやら楽しそうに集まっているのを見つけた。

「「「あ!西園寺先輩!!」」」
乱太郎・きり丸・しんべヱのいつもの三人が私の方に走ってきてくれた。

『みんなで何やってるの?』
「今日は七夕なので、みんなで願い事をしているんですよ!」
『そういうことか〜。3人は何をお願いしたの?』
「僕は、小銭がたくさん手に入りますようにってお願いしましたー!」
「僕は、美味しいものがたくさん食べられますようにでーす!」
『しんべヱ、よだれよだれ!!きり丸も目を小銭にするな!!
 …乱太郎は?』
「私は幸運になれますようにって書きました…。」
『そっか、不運だもんね…。
 まあとにかく、みんな願い事叶うといいね!』
「「「はい!」」」
乱太郎たちに手を振り、私はその場を去った。



―その夜、私はなかなか寝付けなかった。
そこで、昼間と同じように中庭を散歩することにした。

夜風が気持ちいい。夜の散歩もいいものだと改めて思った。
「佳代!」
後ろから名前を呼ばれた。
振り返ると、そこには私の恋人である立花仙蔵がいた。

『仙蔵!』
「久しぶりだな。」
立ち話もなんなので、私たちは近くの木陰に腰を下ろした。


「このところ作法委員会の仕事が忙しかったのだが、
 今日ようやく終わってな。」
『お疲れ様!じゃあ、明日からまた会えるんだね!』
「ああ。」

『ねえ、仙蔵。今日七夕だって知ってる?』
「当たり前だろう。知っている。」
『だよね。今日晴れてくれてよかったよ。』
「そうだな。星が綺麗だ。」
『うん。あ!ほら、あそこ天の川見えるよ!!』
夜空には本当に綺麗な天の川が見えた。
あまりの美しさについ見とれてしまった。

「ずっと一緒にいられますよに」
『え?』
「織姫と彦星は一年に一度しか会えない。愛するものと会えないというのは悲しいことだ。
 私は、お前とはそんなふうにはなりたくない。
 こうして隣にいて幸せに過ごしていたい。
 それが私の願いだ。」

『仙蔵…。
 よし!じゃあ私からも願い事!
 仙蔵とずーーっと幸せに暮らしていけますように!!
 ね?』
「フッ、そうだな。」


「ずっと私のそばにいてくれるな?」
『うん。これからもよろしくね、仙蔵!』


お互いが忍であり、危険な任務に出向くこともあるだろう。ずっと共に生きていけるかなんてわからない。


たとえそうだとしても、そばにいたい。失いたくなんてない。
そんな願い。

この人のおかげで気づくことができたのだ、
そう思えること自体が幸福なのだと―。

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