《MUMEI》 告白《食満留三郎》「おーい、豆腐を一丁くれ。」 『はい、まいどありー!』 月城屋。このあたりでも美味いと評判の豆腐屋だ。 私はここの娘で、いつも店の手伝いをしている。 「こんにちは!豆腐を買いに来ましたー!」 『いらっしゃーい!…って久々知くんか!』 自分で豆腐を作ることの多い久々知くんだが、よくうちに豆腐を買いに来てくれる。 「はい!あ、今日はこの人も来てますよ。」 『え?』 「よっ!」 『…留三郎。久しぶり!』 「ああ、久しぶりだな。」 私は5年前にこの町に引っ越してきた。 留三郎とはその前からの知り合いで幼馴染だ。 忍術学園に入ったということだけは知っていたが、会うこともなかった。 しかし1年前のある日、久々知くんがうちに豆腐を買いに来た。 その時、偶然一緒についてきていたのが留三郎だったのだ。 それから留三郎は度々この豆腐屋を訪れてくれて、 昔のようにまた会えるようになったというわけだ。 「今日時間あるか?」 『ああ、うん。もうちょっとで終わるから。 それまで待っててもらえる?』 「ああ、大丈夫だ。」 『よかった、じゃあまた後で。』 ―久々知くんが豆腐を買って帰り手伝いが終わったので、 留三郎との待ち合わせの場所まで急ぐ。 『待たせてごめんね、留三郎!』 「ああ、大丈夫だ。」 『よし、じゃあ今日はどこ行く?』 「今日は付いてきてもらいたいところがあるんだ。」 『あれ、そうなの?じゃあ行こうか!』 留三郎と緩やかな山道を歩いている。 いままで来たことのない道だった。 私は体力がないので、正直しんどい。 「大丈夫か?」 『うん、大丈夫だよ。』 「そうか。辛くなったら言えよ。」 『うん。』 留三郎は、いつも優しくて頼れる。 ほんとに昔と変わんないな―。 「ほら、着いたぞ。」 小高い丘から一望できる景色は、本当に美しいものだった。 『…綺麗。』 「これをお前に見せたかったんだ。」 『すごい!ありがとう、留三郎!』 「…凪、これを…。」 『ん?』 留三郎は私に何かを差し出してきた。 『…櫛?』 「今日、お前の誕生日だろう。 プレゼントだ。気に入ってくれるかと思って…。」 そうか、今日は私の誕生日だった…。 店の手伝いが忙しくて忘れてしまっていた。 『ありがとう、留三郎! すごく嬉しいよ!!』 「ほんとか!よかった。」 「…凪。」 気づくと私は、留三郎に抱きしめられていた。 『え…、留三郎。』 「俺、お前のことが好きだ。 ずっと昔から好きだった。 …俺と付き合ってくれないか?」 突然だった。 でも、嬉しかった。 『留三郎。私も留三郎が好きだよ! だから、私と付き合ってください!』 ―愛するものと結ばれることの喜びを私は知ったのだった。 前へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |