《MUMEI》

 無の時間を破ったのはほかでもない、「示してみろ」と言ったヤマトだった。
 ヤマトは空いた手をオレの後頭部に置き、自分の方に引きよせた。息がかかりそうなほど近い所で止める。

「ちょっとヤマ――」
「行動で示せ」

 ――きっとこれは、誘っているんだ、そう思っていいだろう。ヤマトなりにオレの感情を受けようとしているのか、よく分からない。とりあえず

「…………ヤマト」

 彼の言いなりに……駒になるつもりはない。オレを動かすのはオレの意志だ。

「愛してる」

 だから、この感情は久世響というオレの意志に基づいた感情。ヤマトにそう操作されなかったもの。オレはこの想い、愛を目の前の彼に捧げる。

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