《MUMEI》

「さやーテレビ観てたの?」
七生が紗耶香ちゃんの隣に座る。紗耶香ちゃんだ。
母さんは……?


「んー、おばさんに入れてくれた。」


「何か言ってた?」
七生が探りを入れた。


「七生達のお部屋に行ってテレビ観たいっていいなさいって。
でも、聞いてくれなかったからさやが下のテレビつけちゃった。」
紗耶香ちゃんは俺の部屋でテレビを観なさいと言われてたが、当の部屋の主が気が付かなかったようで仕方なく居間で観ていたらしい。賢い子……ってか、俺達が駄目なんだよ。


「いやー、さや居たの気付かなかったな〜。ごめんな?」
本当に。


「うん。さやも遊んでたらママの声聞こえなくなるよ。」
あ、遊んでた……のか?


「じゃあ、さや内緒に出来る?一緒にテレビ観てたってことにして?」
アリバイ作りに子供を巻き込むとは恐ろしい男だ。


「うん、出来るよ〜。さやお友達の内緒まだ一回も言ってない。」


「紗耶香ちゃんありがとう。これあげるね。」
いい子だ。
ポケットに入っていた飴を一つあげた。



何はともあれ、母さんが見てなかった事に安心した。

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