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《MUMEI》 何処へ行ってしまったのだろうか 全く当てのない片岡は唯闇雲に街中を走って探す だが七星を見つける事は出来ず 片岡はいったん脚を止め、乱れてしまった呼吸を整えた その時だった 肩で息をする片岡の底へ一匹、天道虫が止まったのは それは何かを訴える様に羽根をせわしなく動かし そしてついて来いと言わんば仮に片岡の前を飛ぶ 「……行って、みるか」 ついて行った先に七星が居る確証はない だが、この天道虫は七星の居場所を知って居る様な気がする、と 片岡はその後を追った 「おや。来たのかい、あんた」 暫く追って、到着したソコは酷く拓けた場所 陽光が燦々と降り注ぎ、その強さに片岡が僅かばかり眩暈を覚え立ち尽くしていると 以前のあの人物が片岡の前へと現れる 「よくここまで来る気になったもんだね。ここは今、陽の光が最も集まる場所なのに」 陽光を背負い、片岡へと嘲る様な笑みを向けてくる空いtれ 片岡は余計なお世話だと相手を睨めつけてやり 「……七星は？」 七星の所在を聞いてみる 相手は僅かに肩を揺らすとゆるり指を差した その先にあったのは枯れ朽ちた巨木 ソレを見上げる七星の後ろ姿を見つけ、片岡は傍らに立ってみる 同じ様に同じものを見れば、天道虫の想う処が解るかもしれない、と 「……何が見える？」 片岡には唯そこに在る木 七星は一体何を見ているのだろうと視線を追うてみる 「これ以上、この子に深入りしない方がいいわよ。人間」 突然の陽光 片岡は咄嗟に手で日除けを作るがそれでは防ぎ切れず 光に中てられた目の奥が白濁に染まっていく 「陽の光は、直接見てはだめだと、言われなかった？」 霞掛っていく視界 その中で何とかその声の主の姿をとらえ 「……お天道様」 七星のか細い声で、それがお天道様だと言う事が知れる 「人は、太陽に近づき過ぎてはいけない。強過ぎる光はヒトを殺すわ」 視界を奪われ、眩暈さえ覚え片膝をついてしまった片岡 その間近へとお天道様は歩み寄ると、片岡の顎に指を添え上向かせた 「……次は、お前」 ニヤリお天道様の口元が弧を描き 顎を捉えていたその指が首筋へと触れる瞬間 「……駄目」 片岡を庇う様に七星がその手を遮っていた 「何を、するのです？」 「……主に、触らないで」 片岡とお天道様との間へと七星が立ち位置を変えれば お天道様の表情がいびつに変わっていく 笑みが崩れ、怒りを顕わに七星をにらんでいた 「何故、解ろうとしないの？ヒトなど、要らないのに」 「……要らなく、ない」 お天道様の言葉を否定するように嫌々と首を振る七星 その様にお天道様が深々と溜息を吐いたかと思えば 「もう、いいわ」 凍り付いてしまいそうな程冷たい声色のそれが返り そして直後に、肉を刺し抜く鈍い音が鳴った 七星がそれに気づき、向きなおれば片岡の身体がちょうど崩れ落ちた 「主！」 多量の血を流し、倒れる片岡 そしてそこに、刀を握り立ち尽くす六星の姿があった 片岡の返り血を浴び、ただ赤くそこに在る 「どうして？どうして!?」 何故、ヒトをこれほどまでに煩わしく思わなければならないのか 訴えるようにお天道様を見やる七星へ 「ヒトは、私たちに憎悪しか向けない。だから、必要ないの」 お天道様の言葉に、七星は以前殺されそうになったあの時の事を思い出す 向けられた憎悪 あの時はヒトを嫌いになってしまいそうでそれが怖かった だがそれに耐えられたのも、片岡がそばにいてくれたからだと 片岡を抱き起してやりながら何度も首を振って見せる 「……ヒトは、怖い。でも、主は違う!!」 「何が違う？ソレもヒトだ」 何も違わない、と片岡の血が滴る刃先を向けられ 恐怖に、七星の喉が擦るような音を立てた 逃げればいいものを 大量出血で段々と体温が薄れていくのを感じながら 片岡は、だがそればかりを考える 「これは、お天道様の(救い)だ。何故ソレを受け入れない？」 人をすべて消す事が(救い)だというのか そうだとすれば随分と勝手な物言いだと片岡は舌を打つ 「……(救い)って何？人を殺す事が、どうして(救い)なの？」 思うことは同じだったのか、六星を睨みつける七星 前へ |次へ |
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