《MUMEI》
真実の断片2
真弓は自信作を担当の増田に見せているところだった。

描き始めたのは昨日からだが、それまでに頭の中で幾度となく推敲してきた。
いつも真弓の作品にケチをつけてきた増田も今回ばかりは褒めるしかない。
−−−そう真弓は思っていた。

「うーん良い作品じゃないな。萌えのある画を期待していると伝えたはずだが。
ダメだなこれは」

「そんな、十分に期待に沿えられた出来映えだと、自負してます。何がいけないんですか」

「ただ胸をちらっと見せればいいという問題じゃないよ。まだまだ君は勉強不足だな」

増田は色々と説明していたが真弓の耳には入っていなかった。真弓は増田がたいした人間でないことを知っていた。自分で描いた画は全くダメ。会社からの評価は最悪の部類に入るだろう。その腹いせに部下にあたっている。
そんな増田の言うことなど聞けるはずなどない。


昨日の徹夜の苦労が水の泡か……
こいつは今日も休みなく働けと言っている………
守君に今日は行けなくなったと伝えないとな。

真弓はそんなことを考えていた。

「おい、聞いているのか。だからお前はダメなんだよ」


グシャっと自信作を潰された。

………くっダメなのはお前の方だ。


真弓は自分の作業デスクに戻り、しばらく放心していた。

グシャっと潰された画には完全にバランスの崩れた少女がいた。

それをごみ箱に投げ捨てた。

その姿を見て増田がこちらに歩いて来る。そして今ごみ箱に捨てた画を拾い、真弓のデスクの上に置いた。
真弓は増田が謝ってくれると思った。
さっきは言い過ぎてしまって悪かった。
許してくれ………こんな言葉を期待していた。


「ゴミはきちんと分別して捨ててもらわないと困るよ」

「えっ?あの、………分別はしていますが」

「いやいや、これはここじゃないだろ。
いいか、この画には萌え要素がないと言っただろ。だからモエル方に入れられては困るんだよ。これはモエナイ……ゴミなんだからな。ハッハッハッハ」



グシャグシャグシャ。




………ゴミはお前の方だ。死ね、死んでしまえ。ゴミらしい死に方で。

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