《MUMEI》 3「お早う。目が覚めた?」 迎えた朝の中、少年はゆるり目を覚ました 起きるまでその様を見ていたメリーは、ようやく起きたとため息を一つ 「……ここ、俺の部屋か」 「そうみたいだね」 「……あいつ、は?」 妹の所在がやはり気になるのか、問うてくる少年へ メリーはまたため息を吐きながら、だが無言のまま それを一体どうとったのか 少年は項垂れ、布団を頭から被ってしまう 「なあ、夢喰い」 暫くの無言のあと、布団の中から徐にメリーを呼ぶ声 何かと返してやれば僅かに布団の中から顔をのぞかせながら 「……あいつがもう生きてないって、本当なのか?」 やはり気になったのだろうソレを問うてきた 問い質すようなその視線に、メリーは溜息をつくと 言うよりは見たほうが早いだろう、と少年を連れ隣の妹の部屋へ 静かに戸を開き、中へと入ってみれば ベッドに横たわっているのだろうか、膨らみが見える 見てみろと布団をめくってみるよう促すメリー 言われるがままに少年が布団をめくってみれば其処に 手足がバラバラにされた操り人形があった 「……なんだよ、これ」 その反応は尤もだろう 妹だと思い、そして接してきたはずのソレが人形だと言われたのだから 「……でも、君は多分知っていた筈だよ」 「何、を?」 「妹が、もう死んでいたことを」 「!?」 メリーのソレに少年の目が見開いた 矢張り、そうか 確信を持ったメリーは徐に手の平を少年の額へと宛がい 「見せて、もらうよ。妹がいなくなった時のことを」 言い終わりに現れる一匹の羊 手の平ほどの大きさだったそれは膨らみ そして、羊が口を開けると少年を担ぎ上げその中へ 「な――!?」 メリーのいきなりなソレに少年は叫ぶ声を上げてしまいながら 落とされないようメリーへとしがみつく 深く深くへと沈んでいく感覚 怖い怖いと少年の呟く声がメリーの耳元で鳴った 「……大丈夫だよ。前見て」 少年の顎へと手を添えてやり、前を向かせる 暫くして目の前に見えてくる何か ソレは、夢が記憶する、少年と少女の日常 その穏やかに見える日々に何があったのだろうかと メリーはその記憶を渡ってみることに だがどれだけ記憶を渡ってみても妹がいなくなった時のソレが見当たらない 少年にその時のことを覚えてはいないのかを問うてみれば 「……俺、知らない。何も、解らない――!」 頭を抱え、蹲ってしまう この状況では少年から聞き出す事は難しいだろうと メリーは僅かにため息を吐くと少年にその場に居るよう言って聞かせ、そして宙に浮いた 「夢喰い!何処行くんだよ!?」 その記憶だけがないのは不自然すぎる 少年の怒鳴るようなソレにメリーは返してやることはせずに 広がる眼下にその手がかりを探す 様々な記憶の中、だが探すソレはどの夢にも見受けられない 「なんで……?」 あまりにも見当たらなさ過ぎるソレに、メリーは怪訝な顔 さてどうしたものかと髪をつい掻き乱した直後 メリーの視線、その先に僅かに光る何かが見える 何なのかとメリーは目を凝らすが遠目には解らず 近く寄ってみればソレは一匹の獏 メリーの姿をみるなり、警戒するかのように身を低く構えてしまった 「……君は、あいつの?」 膝を折り、触れようと手を差し出せば その獏は口を開けメリーの手へと噛みつく 感じる痛み、流れ出る血液 夢の中であるはずのソレが、ひどくリアルに感じられた 「もしかして、君が食べたの?」 見当たらない妹との記憶 もしそれが少年にとって(悪夢)だったとしたら この獏が食べてしまったとしてもおかしくはない 「……見せて、くれる?」 改めて獏へ触れようとメリーは手を伸ばす その手が危害を加えるものではないと判断したのか 獏はされるがまま、メリーの手に身を委ねた 「やっぱり、君が食べてたんだね」 丸々と膨らんだ獏の腹を撫でてやれば 獏の口がパカリと開き、その喉の奥に黒く渦巻く何かが見えた 「返して、もらうから」 言うや否や、メリー獏の口の中へと手を差し入れる そしてそこから取って出したのは小さな雲の様な何か ソレは夢の中に残る記憶の欠片 もしかしたら、とメリーはその記憶に触れてみる事に 前へ |次へ |
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