《MUMEI》
一緒に
−−−−−−−−

高科を死なさないで済む方法を考えてからもう数時間が経過していた。

未だにその答えは白紙に近かった。

−−山本と一緒に考えよう。

私も山本も高科を死なせたくないという想いは同じなんだ。

−−−−
山本の部屋に向かうまでに、私はまた過去を振り返っていた。

山本から手紙を受け取ったころの私はずっと機械の勉強をしていた。

はっきりと意識はしていなかったが、おそらく心のどこかで、父の起こした事故は車の方が悪かったんだ。そんなふうに考えていたと思う。

そう考えることで、私の気持ちは少し救われたように思われる。

全ての責任を車が背負ってくれればいい。

そう思っていた。



手紙によって山本が心理学会で働いていることを知った。

私は僅かな現実逃避を繰り返すことで父のことを忘れようとしていた。

しかし山本は苦しみながらも、犯罪を無くそうと一生懸命になっているようだった。

−−そうだ、私は何をやっているんだろう。私は本当は知りたかったんじゃないか。どうして父が死ななければならなかったのかを。

山本が望むように、犯罪のない世界、人が死ぬことのない世界、それを私は望んだんじゃないか。

そして心理学会に入ろうと思った時決意したじゃないか。

私は戦う女の三倉里緒なんだ……と。




−−お願い山本、私と一緒に答えを探そう。

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