《MUMEI》
輪廻の契約者
街へ着いた俺達は、まず街に被害がでてないかを調べたがどうやらまだあいつは来てないようだ。
「とりあえずは安心みたいね。」
「ああ。だけどあいつは絶対ここに来る。その前に倒すしかない。」
「ええ。じゃあとりあえずあいつを探しましょう。何か特徴ないかしら?」
そう聞かれ俺は先刻の記憶を辿った。
「ええと、とにかく大きかったな。
あと耳があまり良くないみたいだ。」
「大きかった?うーんまさかね。」
意味深なことを言うので俺は気になって聞いてみた。
「何か知ってるのか?」
「いえ何でもないわ。」
「ならいいけど・・・じゃあ手分けすか?」
「いえ一緒に行動しましょう。別行動は危ないわ。あとあいつを見つけても私より先に行かないこと!いいわね。」
「わかった。」
そうして俺たちはあの怪物を探し出した。
「いた!けどあいつは・・・」
確かにいる。まだ森の中だがもう少しで街へ来てしまうだろう。
「よし行くぞ!」
と俺は怪物に向かって走った。
「ちょつと待って!」
だが彼女の声は俺の耳に届かなかった。
「くそ!あの野郎見てろよ。」
そして俺は怪物の前まで来た。
相手も俺に気づいたようだ。
威嚇するかのように唸り声をあげている。
すると相手は何のためらいなく俺に向かって拳をふりおろしてきた。
俺は間一髪で相手のパンチを避けたがパンチの風圧で俺の体はあっけなく吹っ飛んだ。
「ぐはっ!」
吹っ飛ばされた俺の体は木に激突し俺の体は力なく地面に落ちた。
「こいつ・・なんて力だ・・」
腕も脚も動かない。
これは俺・・死んだな・・
すると奴は唸りをあげながら俺に止めをさすべく腕を振り上げた。
だが奴の拳が当たったのは俺ではなくあの女の子だった。
「だから・・先に・行くなって・・言ったのに」
俺のかわりに攻撃された彼女は、自分のことより俺のことを心配しているようだった。
「なんで俺のことばっかり心配してんだよ?」
「ははっ・・自分でも・・わからないわ。」
苦しそうに喘ぐ彼女を安心させるため俺はこう言った。
「ちょっと待ってろよ。あんなやつ俺がぶった切ってくるから、だから死ぬなよ!」
彼女は弱々しく言った。
「わかったわ・・頑張って・・」
その言葉に俺は大きく頷いた。
そして俺は怪物にむかって言った。
「おい!デカブツ、女に手あげるなんて最低だぜ。」
そう言い放つと俺は輪廻刀を抜いた。
抜いた刀は重かったが、何故か今の俺にはちょうどよい重さだった。
だか刀を抜いた瞬間、俺の頭に激痛が走った。
そして俺の脳裏に謎の映像がフラッシュバックし何か懐かしい感覚がした。
俺の前に立っているのは歳をとった老人、そして手に持っているのは竹刀・・・
そうか・・これは俺の前世の記憶か・・
今まで思い出せなかったこの記憶は俺が厳しく教え込まれた・・・剣術の記憶・・・
「前世の記憶なんて役に立たないと思ってたけど、まさかこんな場面で役に立つとは思ってなかったぜ!」
と言いながら俺は怪物にむかって剣をふりおろした。
しかし俺の剣は、カイーンという硬質な音と共に弾かれてしまった。
「もっと強い攻撃じゃないとだめだ!クソッ、やるしかねえ!」
俺は覚悟を決め、敵に技を決めるためにもっと近づくこうとしたのだが敵は俺の攻撃で怒ったのか勢いよく、拳を降り下ろしてきた。
降り下ろされた拳を避け、俺は敵の腹にむかって技を繰り出した。
「剛剣、一ノ型、朱円斬ッ!」
腰の回転を利用し腕を腰と同時に振り上げるこの技は俺の流派のなかでは基本の型のひとつなのだが、そのぶん一番扱い易い技である。
当たった敵は腹から真っ二つに斬れて、消えてしまった。
「終わった・・のか?」
俺は疲れて、その場に倒れこんでしまった。
この時、俺は改めて手の甲にできていた“蛇の刻印”に気づいた。
この刻印が輪廻の契約者に与えられる刻印だと俺が知るのはもう少しあとのことである。

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